貧困問題は、経済成長著しい中国でも深刻だ。現地の情勢に詳しい拓殖大学教授の富坂聡氏が指摘する。
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今年6月初旬、両親が出稼ぎのため家を空けていた貴州省の貧困家庭で、兄弟4人が農薬を飲んで自殺するというニュースが中国社会に衝撃を与えた。
一家の生活を支えるため夫婦そろって家を空ける子供たちの問題、いわゆる留守児童問題はかねてから社会の抱える大きな問題とされてきた。今回、子供たちが自ら命を絶ち、さらに生きることを拒否するような遺書を残したことであらためて大きな注目を浴びることとなったのである。
事件以降、中国のメディアでは発展から取り残された内陸部の貧困地域を紹介する記事が続々と掲載されるようになった。
6月18日付『中国新聞ネット』の記事もその一つだ。タイトルは、〈白書が明らかに 1000万人近い中国の留守児童は年間一度も両親に会えない〉だった。
記事の中身は、中国の公益組織「上学路上(ストリート・スクール)」が18日に公表した「中国留守児童の心理状況白書2015」をうけて、タイトルのような事実を詳細に報じたものだ。
1054人の留守児童を実際に訊ねて行った調査から、約3割の児童が年間1回から2回、約15%の児童は年間を通して一度も両親とは合っていないという結果が導き出された。現在推計される全国の留守児童約6100万人にこれを当てはめ、〈1000万人近い中国の留守児童は年間一度も両親に会えない〉と推測したのだ。
同じように6月22日付の『新華ネット』は、貧困地域の生活調査レポートとして、〈新華社が最貧困地域をレポート、人間と家畜が同居、肉食は年間約3回〉というタイトルの記事を掲載している。
また、香港紙『新報』が6月26日付で報じた記事によると、こうした貧困の村では嫁不足が慢性的な問題としてあり、近親間での結婚が日常的に行なわれているという。なんとも悲しくなる話だ。