今年5月、28才の一般女性との入籍を電撃発表した、陸上男子ハンマー投げの室伏広治(40才)。ハンマー投げにはあまり興味はないものの、「彼の結婚だけはショックだった」と嘆く女性ファンが続出した。端正な顔立ち、ストイックで寡黙な佇まい、屈強な肉体、大学教授を務める知性。週刊誌の取材でプライベートを語るのは初めてという室伏の、知られざる素顔に迫った。
ハンマー投げは重量7.26kgの鉄の塊(いちばん重いボウリング球とほぼ同じ)を、遠心力を利用してより遠くへ投げる競技。手からハンマーを離すリリース時は体に400kg近い張力がかかるため、大きな負荷に耐え得る強靭な肉体が必要となる。
これを可能にするのは、389kgを誇る背筋力。「霊長類最強」と呼ばれた男子レスリングのアレクサンドル・カレリン選手の全盛期が400kg超だから、室伏もほぼ同格だ。以前、プロのスポーツ選手たちが身体能力を競う人気番組『筋肉番付』(TBS系。2005年まで放送)では、室伏が出場するとパワーのレベルが違いすぎて、ほかの選手の“2位決定戦番組”になってしまうため、出演オファーができなくなった…という逸話もある。
「年齢とともに筋力の衰えは感じますが、維持できる部分、伸ばしていける部分はあります。それは中枢神経系にまつわる動作で、動きの質を高めて効率よく動いたり、小さな力で大きな力を生むことができるのです」(室伏)
室伏は准教授を務めた中京大学の大学院で「スポーツバイオメカニクス」と呼ばれる研究分野を手がけ、「身体の運動」に関する科学を追究してきた。その理論と競技の経験に基づき生まれたのが、独自トレーニングの数々。一見ギョッとする、乳児のハイハイや手足をばたつかせる動作を真似た「赤ちゃんトレーニング」、漁師にヒントを得た「投網投げトレーニング」などはよく知られるところだ。
現在、室伏は2016年のリオデジャネイロ五輪出場を目指す一方、要職にある組織委員会と東京医科歯科大学で激務をこなす日々。
組織委員会では「スポーツディレクター」の肩書を持ち、堪能な英語コミュニケーション力を生かして国際オリンピック委員会(IOC)などを相手に国際渉外を担当している。
大学では、けがの予防・リハビリなどの面からアスリートを支援するスポーツサイエンスセンターのセンター長として研究・指導にあたる。
さらに、市民スポーツにも積極的に参加。東日本大震災の復興支援として、若手選手らと福島県いわき市で小学校の運動会に参加したり、7月24日~8月7日に行われる青森︱東京間を市民がたすきでつなぐマラソン「1000キロ縦断リレー」では、親善大使として参加者と一緒に走る予定だ。
「東日本大震災以降、多くの選手が被災地を訪ねて励まし、励まされました。スポーツを通しての社会貢献にもアスリートの役割があると思います。もちろん、競技生活との両立は一筋縄ではありません。私は、人間の素晴らしさは、不可能と思えることに挑戦し乗り越えていく力、自分の限界を超えていくプロセスにある、ということをスポーツを通して学びました。そこに至るには、肉体だけでなく精神とのバランスが必要で、私もそれを極める道半ばです」(室伏)
※女性セブン2015年7月23日号