演じることは一流でも、意外なことができない女優がいる。それも一人や二人じゃないようで…。コラムニストのペリー荻野さんが綴る女優の「できない問題」――。
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先日、『ごきげんよう』で突然、「スキップができない」と言いだした釈由美子。釈といえば昨年、映画『相棒劇場版Ⅲ~巨大密室!特命係絶海の孤島へ』に、島で訓練を重ねる謎めいた民兵チーム唯一の女性隊員役で出演。迷彩服に身を包み、ノースタントで橋から川へ飛び込んたり、激しい訓練を積むシーンにも体当たり、アクション女優じゃなかったったけ?
会場のお客さんみんなが驚くと、司会の小堺一機もびっくりしたらしく、さっそくスタジオでスキップをするよう提案。そこで見せた釈のスキップは、トコトコと3、4回かかとをついては転がりそうになるという「失敗してるケンケンパー」であった。
あまりのことに『ごきげんよう』では、追跡取材を敢行。取材というよりは、イケメントレーナーをつけて釈にスキップをマスターさせようという企画だったのだが、失敗ケンケンからなかなか進歩せず、2回弾んでいるときには反対の足のヒザを上げるといった動作に「同時進行なんですね! 一度に2個はできない…」と暗い表情の釈。それでも懸命に練習を続け、仕上げに潮風公園の広い芝生をぴょんぴょんと飛び、「先生できました!」と喜ぶのであった。
しかし、どう見てもそれは、「失敗ケンケンにドリフのヒゲダンスの手ピョコピョコをつけた動き」で、トレーナー先生も「…」。不思議なスキップに不思議な手の動きが加わり、「逆にぼくらはマネできないね」と小堺にしみじみ言われる結末となってしまった。
とはいえ、昔から女優は普通のことができない、浮世離れしているほうがいい。面白いのである。私も以前、某大物女優から「地下鉄って線が多くてわからない。ドラマでピッと通る(←自動改札のことらしい)シーンがあって緊張しちゃったわ」と聞いて、「いいんです、それでいいんです!」と思ってしまった。
「できない系」で注目された女優といえば、はいだしょうこがいる。ふだんから電車に乗って自宅に帰れただけで家族からほめられるという彼女の場合、「一輪車には乗れるが自転車には乗れない」。乗れない理由が素晴らしい。「ハンドルがあるから」。
また、最近、『しくじり先生』はじめ、バラエティで活躍している紫吹淳。日常生活のすべてを元熱烈ファンで現在はマネジャーとして付き添う女性、通称ばあやにおまかせで、自他ともに認める46歳の赤ちゃんなのである。舞台の会見で「皿洗いのシーンがある」と不安を語った紫吹。洗ったことがなかったのね…。
はいだ、紫吹、ともに宝塚出身で、浮世離れしているのもなんとなく納得だが、まだ上には上がいる。若尾文子だ。52年のデビュー以来、多くの映画、ドラマで活躍。この夏には新宿で60作品が一挙上映されるなど話題も多い日本を代表する女優である。この名女優は、パスタもラーメンも食べたことがなく、日本蕎麦も数年前に好きになったらしい。当然、作ったこともなければ、コンビニに買いに走ったこともなし。今の世の中、食べたり作ったりするより、食べない、作らないでいるほうがよっぽど難しい気がする。さすがだ。
「できないことが勲章になる」これぞ、大女優の証。文子様をしのぐ伝説が今後、出てくるか? ハードルはかなり高いけど、出でよ、できない女優!