韓国は日本以上の苛烈な学歴社会だが、ノーベル賞受賞者の数となると22対1で日本が圧勝。そこで注目されたのが日本の教育である。ノンフィクションライター・高月靖氏が韓国の教育事情をレポートする。
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日本の専門教育が韓国でもてはやされた背景には、超学歴社会、受験戦争というおなじみの教育問題もある。学力だけでなく、専門性を磨くことで生き残ろうというわけだ。
韓国では親たちが遅れを取るまいと張り合うあまり、幼い頃から塾などの習いごとをさせるため家計負担が増大。高校ではさらに夜遅くまで学校に残り、自習しなくてはいけない。
だがその結果として上位の大学がますます狭き門となり、学歴がインフレ化。大学進学率は日本が49.9%、韓国が70.7%(2013年)だが、大卒の就職率は日本94.4%に対して韓国56.2%(2014年)。韓国の子供は不毛な「競争のための競争」に、幼い頃から追い立てられているようなものだ。学習時間に対する成績の効率は、経済協力開発機構(OECD)30か国中24位との報告もある(韓国職業能力開発院2008年発表データ)。
また青少年の自殺率は2000年の6.4人から10年で9.4人に増加。深刻なゲーム中毒や学校暴力、また児童生徒の肥満率上昇も、常にこの学業ストレスと関連づけられている。
こうした問題をふまえて議論されてきたのが、韓国では軽視されてきた体育の充実と部活動の導入。例えば教育部(文科省に相当)は2007年に小中高校のスポーツ部活性化を宣言した際、「日本のスポーツ部参加率は50%超。韓国は今後5年で30%を目指す」との目標を掲げた。
また政府支援研究機関・教育開発院は2013年の報告で、日本の事例を詳しく紹介。そこでは体育も部活動も、社会性と道徳性を育む「人格教育」の役割が強調されている。こうしたなか朴槿恵大統領は、人格教育のための学校体育をテーマに打ち出してきた。2013年には全ての小学校に体育担当教師を配置する方針も示している。
※SAPIO2015年8月号