育児中のママたちに衝撃が走っている。インターネット上で販売されていた「冷凍母乳」の中に、母乳を人工乳で薄めた「偽母乳」や、感染症を引き起こす細菌が通常の母乳の最大1000倍含まれている不衛生なものがあることが毎日新聞(7月3日朝刊)で報じられ、厚生労働省や消費者庁が「衛生上の問題が大きい」と飲ませないように警鐘を鳴らしているからだ。
ある母乳販売サイトを見ると、同じ50ミリリットルでも〈800円〉、〈1200円〉と異なる価格帯で母乳が販売されていた。なぜか。
「母親が搾乳した時期によって値段を変えている販売サイトが多い。出産直後から離乳食が始まる生後5~6か月までの母親の母乳の方が栄養価が高いため、『産後6か月まで』や『産後12か月まで』という具合に価格帯を分けているんです。利用者は足りない分を随時補う形で、1日100~200ミリリットルなど購入するかたが多いようです」(事情に詳しい都内の助産師)
注文すると、冷凍母乳がクール宅配便で送られる仕組みになっている。《母乳は、全て一週間以内に搾乳された新鮮なものを扱っております》と謳ってはいるが、母乳の衛生状態を検査しているとはどこにも明記されていない。
充分な衛生管理がなされていない母乳は非常に危険だ。厚生労働省は、販売されている母乳の中にエイズウイルス(HIV)や白血病ウイルスなどが含まれていると、母乳を通じて赤ちゃんに感染する危険性があると全国の自治体に緊急警告の通知を出した。前出の助産師が続ける。
「母乳の管理は非常に難しいんです。通常は手を洗い、乳頭を温かいタオルでふいてから搾乳します。搾乳後は30分以内に飲ませるか、すぐに冷蔵。24時間以内に飲ませない場合は冷凍します。ミルクをあげる際にもほ乳瓶の煮沸消毒が必要です。赤ちゃんが口にするものですから、母乳の衛生面は神経質なほど気を使わなければいけない。手を洗わないで搾乳した母乳だというだけで大変危険です。絶対に買わないでほしい」
自治体の委託で母親学級や育児相談、新生児訪問を行っている助産師の浅井貴子さんはこう語る。
「昔は母乳が出ないお母さんが、母乳の出る人にもらい乳をする『乳母』も一般的でしたが、現代では衛生的で栄養の整った粉ミルクがあるので、使わない手はありません。誰のものかわからない冷凍母乳と粉ミルクのどちらが赤ちゃんにとっていいかといえば、断然粉ミルクなのは議論の余地がありません」
※女性セブン2015年7月30日・8月6日号