東京、大阪など都市部を中心にホテル不足が叫ばれている。主な要因はインバウンド(訪日外国人)の増加だ。
円安や訪日ビザの緩和などが後押しし、2014年は過去最多となる約1341万人の外国人が日本を訪れた。観光庁の調査によれば、外国人宿泊者数は4482万人。2011年(1840万人)と比較すると2.4倍にも急増したため、ホテル客室の供給が逼迫したものと見られている。
宿泊予約が取りにくくなった現状について、ホテル評論家の瀧澤信秋氏が話す。
「確かに東京都のシティーホテルやビジネスホテルは、外国人観光客の増加が原因で客室の稼働率が85%前後まで上昇しています。彼らは1か月前、中には1年前から予約を入れてくるケースが多いため、直前に仕事の予定が決まってホテルを予約したい出張族が“ホテル難民”になっているとの声も多く聞かれます」
客室不足は高級ホテルのみならず、安価なビジネスホテルも同様だ。外国人旅行者にとって、日本のビジネスホテルは安全で清潔との評価が高く、帰国後の口コミで人気や知名度に一層拍車がかかる傾向にあるという。
そのため、最近では宿泊料金も高騰。通常なら1泊1万円のビジネスホテルが3倍の3万円の料金をつけていると話題にもなった。
今後、ホテル不足の影響がもっとも懸念されているのが、2020年の東京オリンピック時に来日を希望する外国人を取りこぼしてしまわないかということ。オリンピックは単に観戦者を呼び込むだけでなく、日本の観光産業を潤わせる“特需”も期待されている。そんなときに宿泊場所を満足に確保できなければ、機会損失になってしまう。
だが、意外にも心配されているほど深刻なホテル不足に陥ることはないと予測する向きもある。
「オリンピック観戦のための宿泊者は約26万人が見込まれており、そこから割り出される必要客室数は延べ約170万室といわれています。もちろん、日によって変動はあるものの、開催期間は17日間あるので、1日約10万室が必要になります。
ただ、オリンピックを見据えたホテルの大型化は着々と進んでいますし、宿泊特化型ホテルを中心としたチェーン系の新規開業や、会場となる都市部から交通の便が良い近隣県での開業も増えています。そうした計画を含めると、東京と近隣県で約20万室は供給できるのではないかと推計されています」(前出・瀧澤氏)