日本整形外科学会が2007年に提唱した「ロコモティブシンドローム(運動器症候群)」。「ロコモ」の略称でも知られており、「運動器の障害」によって「要介護」となるリスクが高まることに同学会は警鐘を鳴らしている。ロコモの原因として指摘されているのは、主に「運動器自体の疾患」と「加齢による運動器機能不全」の2つ。内臓脂肪症候群である「メタボリックシンドローム」とともに、健康寿命や介護予防を阻害する国民病として注目されている。
運動器の障害というとどうしても高齢者のイメージが強まるが、最近では若い世代にもロコモ予備軍が増えているのだという。自身がロコモ予備軍ではないか、と不安を抱えている若い世代に話を聞いた。大学院生のAさん(女性・25歳)は、こう語る。
「以前、テレビでロコモの特集番組をやっていたのを見てから気になり始めました。番組の中で『足の裏を全部床につけたまま完全にしゃがむことができるか』というテストがあって、それができていない子どもが登場していたのです。それを見て、『私も昔からできなかった』とびっくりしたんです。
足の裏をつけると後ろにゴロンと転がってしまうので、しゃがむときはつま先だけ床につけて、かかとを上げて座っています。まさかロコモ予備軍だったなんて……。通っているヨガの先生に、大腿四頭筋の衰えが将来の運動機能の低下に結びつくと言われているので、スクワットを始めようと思っています」(Aさん)
またBさん(男性23歳・会社員)もロコモに不安を感じている一人だ。
「自分は小学5年の時に、体育で1000メートル走をしている最中に肉離れになったことがあります。もともと子どものころから将棋やオセロ、カードゲームなど家の中でやる遊びが好きで外遊びや運動をほとんどしなかったんです。今も前屈ができないですし、足の裏をつけてしゃがむこともできません。
『ロコモ』という言葉を知るまでは、ただ体の固い運動音痴だと自覚していましたが、この言葉を知ってからは老後が不安になりました。僕が小学生の頃はこういう言葉はなかったので、今の子たちは問診してもらえるだけまだマシだし、対策も間に合うと思います」(Bさん)
高齢者だけでなく子どもたちも生活習慣や運動習慣を見直し、自身の運動器に注意を払っていく必要がありそうだ。