東京未来大学・こども心理学部長の出口保行さんへのお悩み相談。今回は、博多在住の恵吏子さん(29才)から会社の人間関係の悩み相談です。
【相談】
異動した部署で親切な先輩がいます。その先輩のことを同僚に話したら、「あの先輩、自分の都合が悪くなると、手のひら返しで責任転嫁するから注意して」と言われました。それを聞いてから、やたら優しくしてくれる先輩が怖くて…。ほんとうはどっちなの?
【解説】
親切で優しい先輩に好感を持っていたのに、同僚の忠告で、疑心暗鬼になっている恵吏子さん。今後、どのように先輩とつきあっていけばいいのかお困りのようですね。
この先輩のようなタイプを心理学では「偽装安定型」といいます。文字からもわかるように、偽装して安定しているように見せるタイプのことです。
偽装安定型は落ち着いていて、ある程度コミュニケーション能力も高いので、いろいろなことに対応できる人に見えます。だからこそ、まったく別の顔があることに、周囲の人は気づきにくいのです。
このタイプの人の内心は自分に自信がなく、人からどう見られているかをとても気にしています。ですから内心を見透かされることを極端に嫌い、そうなると、とんでもなくキレたりします。
実は、殺人犯や傷害犯にはこのタイプが少なくありません。「まさか、あの人が!」という犯人こそ、偽装安定型なのです。普通の人が受け流すようなことでも、それが本人の怒りのツボだとしたら、感情を抑えられなくなり、いきなりバサッといくのです。しかもなにが引き金になるかわからないから、怖いのです。
いつも人との距離を一定に保とうとしますから、強烈にコミットすることもありません。まんべんなくつきあいができるし、変わりない自分を見せ続けられます。
このように社会性はある程度高いのですが、自分の内心を見せるのが嫌なので、あまり結婚を好まず、独身の人が多いとも。しかし、内なる自分を見られても嫌じゃない人が現れたら、電撃的に結婚してしまうのもこのタイプです。
偽装安定型の人と、どのようにつきあったらいいのかという交際術よりも、まずはそうなのかどうかを、どう見破るかが先決です。
このタイプは普段はとても落ち着きがあるように見えても、トラブルが起こるといきなりアタフタし始めるのが特徴です。つまり、日常とトラブったときの反応のギャップが大きいのです。
普段から小心気弱でビクビクしている人なら、トラブルが起きたときにドタバタするのは「やっぱりね」と想定内のことですよね。
もちろん、誰だってトラブルが起きたら多少は慌てますが、偽装安定型は普段はあえて落ち着き払い、自分を大きく見せようとしている。だからこそ、有事での態度の落差が大きいのです。
まずはちょっとしたトラブルが起きたときに、その人がどう対応するかをよく観察することが重要です。普段との態度や対応が大きく違えば違うほど、偽装安定型が疑われます。
このタイプの人は、トラブルが起こると自己保身のために、平気で他人に濡れ衣をかぶせてきたりします。自分さえ助かればいいと思うので、ミスが明らかに自分にあっても、相手に責任を押しつけてくるので、気をつけなければいけません。偽装安定型だと確信したら、その人とは距離をとったおつきあいをするのが無難です。
※女性セブン2015年7月30日・8月6日号