【書籍紹介】『堀居姉妹の五月(1)』御徒町鳩/講談社/627円
『若草物語』『細雪』に『阿修羅のごとく』。四姉妹のストーリーには忘れがたい名作がずらり。タイプの違う女性たちの選択が積み重ねられて、いつのまにかそれぞれの人生や個性が浮き彫りになるところにおもしろさを感じます。御徒町鳩『堀居姉妹の五月』は、そんな四姉妹ものの新たなマスターピースとしてオススメしたい一作です。
堀居家の四姉妹は、最近そろって人生負け越し気味。長女・春子は夫と別居中。次女・桜子はお見合い通算13連敗。バレーボール選手だった三女の菜実子は実業団解散の憂き目にあい、四女・香奈子はアイドル業を引退したばかり。苦い思いを知っている、もう大人の彼女たちの恋愛事情とは?
最初に描かれるのは、美人なのにオクテの次女・桜子の恋です。セクハラを受けて教師を辞めた桜子が恋に落ちたのは、元教え子の中島くん。桜子を助けてくれる中島くんのSっ気のある王子様ぶりがたまりません。立場が逆転する瞬間が楽しいシンデレラストーリーです。男っぽい三女・菜実子の恋では、男女の見た目や役割についての問題提起も。大人になるほどがんじがらめになりがちな人間関係における一般常識からの解放感が『堀居姉妹の五月』のキモなのかもしれません。
四姉妹ものといえば、全員が並んだ時の華やかなヴィジュアルも魅力のひとつ。本書の単行本カバーはぜひ開いてご覧あれ。御徒町鳩の描くキャラクターはかわいいだけじゃなくて肉感的。泣いたり汗をかいたりする姿も艶っぽく、がっつりエロスと優しい心理描写のコンボで読者の心をくすぐります。
(文/横井周子)
※女性セブン2015年7月30日・8月6日号