幼少期からスポーツのエリート教育は珍しくなくなった。プロゴルファーを育てるには、いくらかかるのかについて、ノンフィクションライターの柳川悠二氏がレポートする。
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女子プロゴルファーの横峯さくらがデビューして間もない2005年、“さくらパパ”として人気者となっていた父・良郎氏に密着したことがあった。鹿児島の片田舎に、私財1500万円を投じて作ったという練習場「めだかクラブ」を案内してもらいながら、彼の言葉に妙に納得したことを覚えている。
「学のないオレの娘だから、スポーツで飯が食えるように育てたかった。女が大金を稼げるプロスポーツはゴルフぐらいやろ。もちろん、プロになれる保証なんてなかった。今思えば、博打だったよな」
良郎氏はプロを目指した3姉妹の練習代を稼ぐために、複数の弁当屋や居酒屋を経営し、練習場を作る際には自宅まで売り払った。さくらが明徳義塾高校に通っていた頃は、マイクロバスをキャンピングカーに改造し、移動費や滞在費を浮かせながらプロのトーナメントに参戦していた。3姉妹は長女とさくらがプロになったが、かかった金額は5000万円を優に超えた。
息子や娘をプロアスリートに育てるそれは親が子の将来に対して行う投資であり、その成功率の低さからすれば確かに博打だ。
家族の金銭的負担が大きいゴルフは、プレーする上で必要なギア(道具)の数からして他のスポーツを圧倒する。ウッド、アイアン、パターに、それを収納するゴルフバッグ。コースに出るためにはプレーフィーを払い、ボールやティーなども用意しなくてはならない。子供用のクラブセットは安価なもので1万円程度だが、成長著しいだけに買い換える頻度は大人より多い。
部活動で行っている学校が少ないため、練習場や指導者も個人で見つけなければならない。バブルの崩壊後、ジュニアを受け入れるゴルフ場(コース)が増えたといっても、一日数千円はかかってしまう。さらにレッスンプロに個人指導を受ける場合は、90分1万5000円ぐらいが相場か。
2年前に娘がプロテストに合格した福島県の母親がいう。
「練習ラウンドを含めて1回の遠征で30万円近くかかります。小中学時代は、年に約200万円ほどかかりました。子どもの成長を考えれば、可能な限り大会には出場させてあげたい。でもそれが家計には大きな負担です」
※SAPIO2015年8月号