1970年代に漫画・テレビアニメとして大人気だった『ど根性ガエル』が、日本テレビ系で実写ドラマとなって放送中だ(毎週土曜日午後9時~)。原作の16年後という設定で、30才のひろし(松山ケンイチ)と平面ガエルのピョン吉(声:満島ひかり)の交流を描くこのドラマは、一体どういう企画として立ち上がったものなのだろうか。プロデューサーの河野英裕さんに訊いた。
──そもそもどうして今『ど根性ガエル』をドラマ化しようと考えたのでしょうか?
河野:松山ケンイチくんの明るく朗らかなキャラクターを活かした作品を夏の土曜の夜にやりたいと思いまして。みんなで笑って過ごせるんだけど、ほんのちょっと奥深いものを表現できるドラマを作りたいな、と。
──松山さんのキャラクターを活かせる作品はたくさんあると思うのですが、その中で『ど根性ガエル』を選んだのは?
河野:今までぼくがやってきた作品は、『泣くな、はらちゃん』『妖怪人間ベム』『Q10(キュート)』という、人間ではない何かが人間とコミュニケーションをとる話だったり、人間ではないものから人間社会を見る話だったり、単純にそういう世界が好きなんですよね。結局、自分がそういうものを作るのが楽しいし、土曜の夜にそういうものを多くの人に見てもらえることができれば嬉しいなという願いはありました。そういう意味で、『ど根性ガエル』は自分が好きな世界であり、松山くんのキャラクターを活かせる物語だったわけです。
──『ど根性ガエル』の原作では、主人公ひろしは中学生ですよね。それが、今回のドラマでは16年後の世界に設定変更されています。松山さんを主演にするのであれば、初めから30才くらい男性が主人公の作品もあったのでは?
河野:子供から大人まで、たくさんの人に見てもらいたいということを考えると、やはり誰もが知っているような大きな原作モノがいいなと思ったんです。そして、人間ではないキャラクターが登場して、みんなが知っているものは…と考えた時、思い浮かんだのが『ど根性ガエル』だったんです。
おそらく、『ど根性ガエル』のドラマ化というアイディアは、プロデューサーなら誰でも思いつくはずなんですよ。ただ、それを実際にやるかやらないかの問題で。原作は主人公が16才だからやめとくか、という選択もあったと思いますが、主人公を大人にしちゃえば松山くん主演でいけるな、っていうことですね。
はっきり言って、40年以上前の原作だし、ギャグ漫画だし、そのまま現代のドラマとしてドラマとして構築するのは難しい。そうなると、ギャグの要素は残しつつも、ストーリーは完全オリジナルでいくしかないし、キャラクターも変化させるしかない。そういう条件でならドラマ化できるなと思って、原作者の吉沢やすみさんに話をしに行ったら「面白くしてくれるならいいですよ」と快諾していただきました。
──脚本家の岡田惠和さんにお願いしたことは?
河野:大きな幹として「ピョン吉は何者なのか」という点を描いていきたいというリクエストはしました。詳しくは言えませんが、そこに新しい設定があるんです。
──ピョン吉の声に満島ひかりさんを起用した理由は?
河野:やはりピョン吉は男の子なので、男性の俳優さんにお願いしたほうがいいのかなとも思ったんですが、ピョン吉というキャラクターは激しさとかわいらしさが同居しているんですよね。それにシャツの中でしか生きられない「平面ガエル」としての切なさも持ち併せていたほうがいいなということで、女性のほうがいいかなと思いました。それを声で表現できるのは満島さんしかいないと。
あとは、単純にぼくが満島さんの声が好きなんですよ。ちょっとだけ掠れているけど、シャウトが気持ちいい声、というか。
──有名な原作の実写化となると、いろいろな意見も出てくると思いますが…。
河野:そもそも自分が大好きでドラマ化している『ど根性ガエル』なので、原作のファンの期待は裏切りたくないという気持ちで、スタッフもキャストも必死でやっています。なので、原作からどう変わっているか、どんな新しい魅力が出ているかという点を見ていただきたいし、それこそ厳しい目で楽しんでもらいたいですね。