今、片づけブームや少ない服でおしゃれするフランス的ワードローブなど、物を多く持たない生き方が支持されている。『SPUR』『eclat』『Oggi』などの雑誌でキャリア30年超のスタイリスト地曳いく子さんも、25万部突破の著書『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)で「おしゃれな人ほど服は少ない。イマイチな服は捨て、少数精鋭で」と説いている。流行にも雑誌にも振り回されず、自分を素敵に見せる服だけを残すコツを地曳さんに聞いた。
――今、洋服もミニマム化が支持されていますね。ファッション業界にも変化が起きているとか。
地曳:取っ替え引っ替え着ていたおしゃれのプロたちも、最近はみんな同じ服を週2回3回と繰り返し着ていますね。円高で昔より値段が高くなったこともあって、「数を少なく、いいものを選ぶ」のがトレンド。“着回し”にみんな疲れてしまったんだと思います。同じセットを繰り返し着ていいんです。プロですらそうなんですから。
――「服が多いこと=快適ではない」ことに気付き始めたのかもしれませんね。
地曳:仕事や家事で大変な中で、物を多く持つと管理や金銭面でも負担になりますよね。1回しか着ていない、それほど気に入っていない服にもクリーニング代や、置くためだけに場所代もかかります。ムダな服は手放して、自分を美しく見せる服だけに絞ったらいいんです。今は昔よりも流れが激しく、流行も次々と移り変わり、気候さえも不安定です。多く所有していると何か起きても即座に動くのは難しくなりますから、無い不便に慣れることです。
――手持ち服が少ないと、おしゃれができないと思い込みがちですよね。
地曳:日本の女子にかけられた、「毎日違う格好を」という“バリエーションの呪い”ですよね。毎日違う服を着たり、着回せる人がおしゃれに見えるとは限らない。むしろ、おしゃれな人はワンパターンですよ。カトリーヌ・ドヌーブにオードリー・ヘプバーンといった名を聞くと、思い浮かぶ髪型やメイク、スタイルがありますよね。米版『ヴォーグ』編集長のアナ・ウィンターだって、ボブとサングラスがアイコンになっています。
キャサリン妃も同じ丈、同じラインのワンピースを着ていますよね。それに同じ服を着ているから国民の反感を買わないんですよ。賢いですよね。おしゃれな人は、いつもボーダー、いつもデニムなど何か定番がある。おしゃれになるということは、自分のワンパターンを見つけることです。
――逆に「服を増やしたり、着回しがおしゃれ度を下げる」と。
地曳:バリエーションを出そうと工夫するからださい格好になってしまうんです。着こなしを増やすために、限られた予算でまんべんなく買うと、微妙な服も混じり込んでしまいます。似合わないものには手を出さない。流行りのガウチョパンツを履いて「変な格好」と思われるより、避けるのが賢いの。
逆に似合うなら、ワードローブは偏っていいの。シャツばかりでも、黒い服ばかりでもいいんです。ワンパターンで職人のように得意を極める。それが、おしゃれに見えるコツです。それに数が少ないと着る服を迷わないので、余計な時間とエネルギーを使わずに済みます。