北京では市内中心部の街頭で、武装警察が実弾入りの機関銃をもち、警備に当たっていた。こうした厳戒態勢の背景を『習近平の「反日作戦」』(小学館)の著書で、ジャーナリストの相馬勝氏がレポートする。
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7月上旬、取材で北京を訪れた。北京の気温は35度以上に達し、太陽の直射日光を浴びると汗が噴き出てくる。この猛暑に加えて、相変わらずのPM2.5(微小粒子状物質)がすごく、外に出るのは相当な覚悟が必要だ。
7月7日は1937年の日中戦争開戦から78周年。大規模なセレモニーや戦勝展示イベントが行われるので、早朝から北京市郊外の盧溝橋にある中国人民抗日戦争記念館に向かった。
記念館周辺は朝の8時というのに、すでに警察車輌が2~3メートルおきに停車し、警官だらけで、記念館に至る道路は警察車輌で封鎖され、近づくこともできない。
警官に入れないのか聞いたところ「活動。活動。党と政府の記念活動がある。習近平(国家主席)も来る。今日は1日中ダメ」とつれない返事。駐車しようにも、警官だらけで、すぐに「ここから離れろ」と注意される。結局、この日は諦めざるを得なかった。
それにしてもすさまじい警備ぶりだ。とても日本の比ではないだろう。
この北京滞在中、もうひとつの驚くべき警備ぶりをみた。車で北京中心部を移動していたら、武装警察部隊の車の前に2人の隊員が機関銃を構えて立っていたのだ。
しかし、なぜ北京の中心部の人通りが多いところで、機関銃を構えているのか。一緒にいた中国人の知人によると、この付近は中国共産党や政府、軍の長老が住んでいる高級住宅街とのこと。天安門広場にも近く、人通りが激しいことから、厳重に警戒しているのだ。
中国では2012年10月、天安門広場の天安門楼上付近で、ウイグル族の乗った自動車による自爆テロがあり多数の死傷者が出た。その後も、雲南省の昆明駅でも同様のテロ事件が起こるなど、テロの恐怖が強まっている。
このため、大都市では地下鉄に乗るだけでも、X線の荷物検査機で手荷物を調べられるなど、警戒が厳しくなっている。いまや北京、天津、上海などの都市部では、武警隊員が機関銃を抱えて、街中を巡回しているという。