5月に発表した小説『ちゃんぽん食べたかっ!』(NHK出版)がドラマ化されるなど、音楽に文筆業に幅広く活躍中のさだまさし。
さだまさしといえば、その昔、『関白宣言』で女性蔑視論者、『雨やどり』では軟弱、『防人の詩』では右翼、『しあわせについて』では左翼と呼ばれたほど、振り幅が広い。どうしたらそれほど振り幅の広い歌を書けるのだろう。
「そう聞かれるのがいちばんつらい。“ぼくみたいな歌”は書かなくていい、“キミみたいな歌”を書けって。そのためにはどうすればいいかって」(さだ・以下同)
柔和なリラックスモードから、やや前のめりになりながら真剣に語り始める。これか、寺岡呼人が「さださんは曲の話をすると怖い」と言っていたのは。
「それは、寺岡くんが重要なことを聞いたからでしょうね。この人には伝えておかなきゃと思うと、真剣になっちゃうんだよね。ナオト・インティライミにも授業しちゃったし…。何を見てどう感じるか。それを伝えるためにどこを歩いたのか、歌は足で書くもんだとかね。ぼくのやり方でよければ、教えるよ。何でも、全部持っていっていいからっていつも言ってるんです」
7月8日に発売された新しいアルバム『風の軌跡』には、『夢見る人』や、『風に立つライオン』など感動的な楽曲に加え、異色の『梁山泊』も収録。ドラマ『ちゃんぽん食べたか』(NHK総合)の劇中歌に提供した4曲のうちのひとつだ。
「この曲は、高校1年の時に出場したライトミュージックコンテストで、実際に演奏して落ちた曲なんだけど、ドラマでもこの曲だけボツ。50年を経て2度目のボツ、悔しいから自分で採用。供養することにしました(笑い)。
歌詞で、“山賊だ”って言いながら“必ず正義は勝つ”“おれらが正義かどうかは別だ”なんて言ってて、そのふざけた感じが好きでね。こういう歌と『夢見る人』が一緒に入っているところなんか、ちょっと頭おかしいよなって、自分でも思うよ。でも、いろんな歌があっていいんだよ。全部がぼくだから」
最後に、色紙に座右の銘をお願いすると、自前の筆ペンを取り出し、書いてくれたのは、“惜しまない”。自分を出すこと、人を楽しませること、曲を書くこと、歌うこと、小説を書くこと、そしてその方法を後輩たちに伝えること。すべてに対して、“惜しまない”のがさだ流なのだ。
と、その横に「左右の眼 右0.7…」って、やっぱり眼鏡は「ダテさだ」!? 最後までチャーミングで楽しいさださん。私たちも惜しまず「推しさだ」です!
※女性セブン2015年7月30日・8月6日号