もはやプロ野球界の一大勢力、清々しいほどのフルスイングで長打を連発する大阪桐蔭高校OBの選手たち。高校野球の名門校で全寮制と聞けば、PL学園に代表される厳しい上下関係を想像するが、大阪桐蔭では下級生が上級生の世話をする習慣がない。今年のオールスター戦では、1学年下の森友哉(西武=2014年卒業)が藤浪晋太郎(阪神=2013年卒業)にタメ口で話す様子がTVで放送されたほどだ。
同校野球部の自由闊達な雰囲気が生み出すメリットは少なくない。平等な練習機会が各選手に与えられることにも繋がる。ただその一方で、ユルい上下関係には弊害も指摘されている。
「大阪桐蔭出身の選手は、なぜか大学・社会人ではうまくいかない子が多い。例えばある強豪大学には、ここ2年連続で大阪桐蔭から4番が進学したが、いずれも野球部を退部してしまった。理由は“上下関係の厳しさに耐えられなかったから”といわれています」(スポーツジャーナリスト)
高校でのびのび育った子供たちにとって、上下関係や厳しい制約を課せられる大学・社会人は窮屈に感じてしまうのだろうか。その点、実力だけが物をいうプロに適しているのかもしれない。高校通算55本塁打を放ち、社会人を経て2000年に西武入団、4球団で13年間プレーした後、現在はトムス野球塾を経営する水田圭介氏が語る。
「私は社会人を経由してプロ入りしましたが、社会人や大学で細かく指導を受けてバッティングが変わってしまう例も少なくない。浅村(栄斗、西部=2009年卒業)とかを見ていると、空振りでもあそこまで振るかというフルスイングをしている。高校卒業後、すぐプロに入ったことで、大阪桐蔭の野球をそのままできているのかな、と思いますね」
※週刊ポスト2015年8月7日号