スマホ画面を指でなぞり、パズルが解ければ敵にダメージ。倒した敵を仲間にして、また新たな戦いへ──今までにない新感覚スマホゲームとして公開されたガンホー・オンライン・エンターテイメントの『パズドラ』は2012年から2014年までスマートフォンのアプリとして売り上げ1位になるほど、若者を中心に絶大な人気を集めている。その開発に自ら携わったクリエイター社長・森下一喜氏に作家の杉山隆男氏が聞いた。森下氏が同社を立ち上げたのは2012年、29歳の時だった。
──ガンホーって珍しい社名ですけど、社長がつけたんですか。
森下:ええ。聞きなれない言葉のほうが耳に残っていいかなと。あとは、お笑い芸人がコンビ名をつけるときに、「『ン』と『濁音』を入れると売れる」というジンクスを聞いていたので「これだ」と。「ダウンタウン」とか、「爆笑問題」とか。
──社長は昔、漫才のコンビを組んでいたんですよね。
森下:高校を出てしばらくお笑いをやってましたけど、相方がやめたこともあって、僕もやめました。
──お笑いをやっていたから、社名もコンビ名と同じように付けたんですか。
森下:そういうわけじゃないですけど、インパクトがあっておもしろい名前がいいなとは思っていました。そのうえで「濁音」と「ン」がついていれば会社もヒットするかなと(笑い)。それで言葉をいろいろ調べていたら「ガンホー」を見つけて。あ、いい名前だなって。
──どんな意味の言葉なんですか。
森下:語源は中国語の「工和(※一緒に働こう、という意味)」なんですけど、それをアメリカの海兵隊が「エイエイオー」みたいな掛け声として使っていたようで、そこからビジネスシーンでも情熱的でヤル気のあるチームを「ガンホーチーム」と呼ぶようになったみたいです。ヤル気とか情熱とか、僕らの精神に根づいている部分に非常に近いものを感じた。
──評判はどうでしたか。
森下:社内の人間はみんな文句言いますよ、いまだに(笑い)。変だとか、正式名称だと「ガンホー・オンライン・エンターテイメント」だから、長くていいづらいとか。けれど、社員には「単なるゲームメーカーではなく、娯楽産業を担う会社としての意味をこめるから『エンターテインメント』を最後に入れよう」と強くいったんです。
そうしたら登記するときに担当の人間が間違えて、「エンターテイメント」で提出しちゃった。正式な英語としてはテインメントだ、って何度も念を押したのに……登記し直すのも大変なので、もういいや、そのままで、ってなりましたけど(笑い)。
※週刊ポスト2015年8月7日号