自衛隊は今、変革期を迎えている。防衛省は軍拡を推し進める中国の脅威などを念頭に「統合機動防衛力」の構築を掲げた(2013年防衛大綱ほか)。陸・海・空の各自衛隊が連動して事態に対処する態勢の構築を目指す。
防衛省は、尖閣諸島など離島が侵略されたケースを想定。「離島奪還」を主任務とする日本版海兵隊「水陸機動団」の新設を予定している。その中核装備が、アメリカから52両購入する水陸両用車「AAV7」である。
離島防衛だけではない。テロリストなどとの戦闘では市街戦が想定されるが、そこでも機動力が求められる。軍事フォトジャーナリストの菊池雅之氏が語る。
「一番驚かされたのは、統合機動防衛力というコンセプトの下、戦車をすべて北海道と九州に集約するという防衛省の決定です。その代わり本州に配備されるのが、機動戦闘車(MCV)。タイヤ走行のため時速100kmのスピードで自走でき、戦車よりも軽いので空輸することも可能。離島で事が起きても、本州から機動展開することができます」
機動力だけではない。MCVや最新戦車「10式」はネットワーク機能が強化されている。敵の位置ばかりか味方の配置などが車内のモニター上に映し出され、攻撃指示などは指揮官がタッチパネルを用いて一元的に行うことができるという。
「ほかにも潜水艦、護衛艦などを増強し、相手国に対する海と空における装備の優位を維持しながら、全体として機動力の向上を図っています。むしろ今後は、現在でも陸海空合わせ25万の充足率を満たせていない、隊員の人員確保がネックになるかもしれません」(菊池氏)
※SAPIO2015年8月号