中村剛也(西武=2014年卒業)や中田翔(日本ハム=2008年卒業)らOB選手たちがプロ野球界各球団の中軸を務めている大阪桐蔭高校。選手の自主性を重んじ、型にはめられず、細かい打撃指導などは行なわれないが、バットを振り切る練習はよく行なわれているという。「マン振り」と呼ばれるフルスイングをする選手が多いのが特徴だ。その意味で、もし大阪桐蔭式の野球をやらせたらどうなるか気になる選手がいる。今年のスター候補、早稲田実業高校の1年生・清宮幸太郎である。
早大、そしてサントリーの監督として一時代を築いたラグビー界の名将、清宮克幸氏(現トップリーグ・ヤマハ監督)の長男。東京・北砂リトルの4番打者を務め、アメリカで行なわれた世界リトル選手権でもホームランを打って世界一に貢献した後、中学生時代にはリトルリーグ世界一のメンバーにもなった。今夏は早実1年生として、高校球界のスーパールーキーと持て囃されている。魅力は、左打席から繰り出す飛距離十分の打撃力にある。
そんな彼が「振り切る」大阪桐蔭の野球に触れたら、さらなる「怪物伝説」が実現したのではないか──野球ファンの夢は尽きない。
球界関係者はどう見ているのか。
「確かに清宮には図抜けた才能があるが、全国のリトルやシニアリーグには、同じく才能にあふれた素材はたくさんいる。特に大阪桐蔭はそんな選手の集まりになっている。西谷(浩一)監督自らがフットワーク良く、全国に足を延ばすことで知られており、鯉城リトルのエースで4番だった中田をリクルートするため、大阪から広島に50回も通った話は有名です」(在阪スポーツ紙記者)
いい意味でのんびりしている早実と、全国から逸材が集まって熾烈なポジション争いをする大阪桐蔭の校風の差もある。
「取材をする限り、清宮本人は乗せられるのが好きなので、プレッシャーをあまり感じないタイプのようです。早実なら清宮を蹴落としてやろうというチームメートもおらず、“お山の大将”として力を発揮できるが、選手同士で生き馬の目を抜くような争いが起きる大阪桐蔭では、清宮は潰れてしまうかも。あくまで大阪桐蔭を倒す立場のほうが、彼には適していると思います」(同前)
ともあれ、球界の常識をいくつも塗り替える大阪桐蔭の野球。高校球界を睥睨(へいげい)し、プロ球界にフルスイングで一大勢力を築きつつある不思議な“力”には、今後も注目していきたい。
※週刊ポスト2015年8月7日号