“終の棲家”探しが社会問題化する中、アメリカ発の高齢者コミュニティ構想(CCRC)が注目を集めている。
CCRCとは、健康なうちにサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)などの施設に入居した高齢者が仕事やボランティアなどを通じ、地域社会と関わりながら暮らすコミュニティ(共同体)を指す。必要に応じて医療・介護サービスを受けられるのはもちろん、運営する事業者が仕事を紹介してくれるケースもある。
日本版CCRC構想の推進を表明している地方公共団体は、すでに全国202団体にのぼる。それ以外にも慶応義塾大学や中部大学、高知大学などがCCRC創設の検討を始めている。民間企業の活動も活発で、秋田銀行は大学や行政機関とともにCCRC研究に乗り出している。
“産官学”挙げてCCRC参入の動きが本格化する中、成功のカギを握るのは立地条件だと話すのは、獨協大学経済学部教授の森永卓郎氏だ。
「高齢者は自分の住んできた街や人間関係を失いたくないものです。受け入れ地域が地方限定になってしまえば、この政策は成功しないでしょう。しかし、大都市圏に近い地域にCCRCができれば、可能性は大いにある。理想は都心から車や電車で90分以内です。
CCRCは財政や社会保険ではなく、居住者の消費で支えるものです。立地を含め、いかに魅力的な街づくりができるかが重要です」
現在、大都市近郊でこの動きが加速中だ。都心から電車で約80分の距離にある埼玉県秩父市はこの7月、姉妹都市の東京都豊島区との間で“CCRC協定”を結び、豊島区内に住む高齢者の秩父への移住促進と、受け入れ施設の整備を進めることで基本合意した。
※週刊ポスト2015年8月7日号