三つ子の魂百までとはよくいったもので、長年培ってきた人生で「キャラ」は作られていくもの。だからこそ、人生後半で突然キャラ替えをすることは無謀だと語るのは、ファッションプロデューサーの植松晃士さん。とはいっても印象を変えたい場合、オバさんは何をやればいいのでしょうか。植松さんが語ります。
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皆さん、ご機嫌よう。いきなりナンですが、ドラマ『天皇の料理番』(TBS系)をご覧になりましたか? 主演の佐藤健さんはもちろんですが、兄役の鈴木亮平さん、妻役の黒木華さんの演技力も光って、前クールの連続ドラマでは視聴率ナンバー1だったそうです。このドラマに感動した女友達から早速、電話がありました。
「華ちゃん演じる奥さんが、けなげですっごくかわいかったの。やっぱり殿方はああいう控えめな女性が好きなのよね。私、これからはけなげキャラを目指すわ」と。
気持ちはわかります。つらいことがあっても笑顔で夫を支える“耐える女キャラ”を、世の殿方はお好きですから。
「でもね」と、今回ばかりはあ・え・て、彼女にご忠告いたしました。
「思うに、アナタの中にけなげで控えめな要素なんて、欠片も見つからないんですけど。無謀なキャラ替えは時間の無駄よ」
まったく似合わないキャラに変更したって、周りの人には息苦しい(見苦しい?)だけだし、本来の魅力が隠れてしまいます。
世の中には、いい人キャラ、姐御キャラ、天然キャラなどなど、いろいろなキャラがありますよね。確かに、自分のキャラの方向性をある程度決めておくと、コミュニケーションを取る際には便利なこともあります。
「私は多分、こういう受け答えを期待されているんだろうな」と予想しやすいし、皆さんの期待通りのリアクションを返せば、その場も和やかに、平和に収まるというものです。キャラというのは、ある意味、人生という劇場で私たちがかぶる仮面のようなものです。
私には「すべての女性は女優であれ」という持論があるのですが、その場、その場に応じて、たくみに仮面を使い分けている女性ほど、周囲に愛され、楽しい人生を送っているような気がします。
天然キャラを例に挙げれば、いつも100%天然キャラで押し通したら、ただの空気が読めないお馬鹿さんです。大切なのは、キャラという仮面をつけたり外したりするタイミングを見極められる、勘と知性を身につけているかどうかということだと思うんです。
たとえば長い間、仕事に没頭してきたあまり、完全にオジさん化してしまった女性がいます。彼女たちは社会的なキャリアのために、あえて自分の中の女らしさを封印し、「さばさばした男前キャラを演じたほうが有利」と考えたのでしょう。
そしていつしか仮面を外すことを忘れてオジさんキャラ一本になってしまったのではないかしら。スッピンにポロシャツにズボンという、「ゴルフ帰りのお父さん?」的な風貌にまでオジさん化してしまうとこれはもう、戻る道はありません。お気の毒なことです。
でも、そういう人に限って、自分が「オジさん化」してることには気づかないので、ご本人にとってはお幸せな人生なのかもしれません。そして、最初の話に戻りますが、一見魅力的に見えるかもしれないけなげキャラって、実はエスカレートしたら、ただの薄幸キャラになってしまいますよ。人生の後半で、あえて演じる必要がありますか?
だから女性は、殿方の自分勝手な願望に合わせたキャラ設定なんて、する必要がないんです。
オバさん、万歳!
※女性セブン2015年8月13日号