2500億円以上の総工費が問題視され、白紙撤回された新国立競技場の建設計画。自民党内で初めて新国立競技場建設問題について反対の声を上げたことで注目されているのが、衆議院議員・後藤田正純さん(45才)。遡ること半年以上前から党内で問題点を指摘していた。後藤田さんはこう話す。
「何がいちばんの問題だったか、それは五輪を通じて、スポーツを通じて社会を豊かにするというビジョンが失われていたことです。政府や文部科学省は、“スポーツ”や“教育”という名の下には、いくらでも金を投入していいと思っている。だから試算が杜撰になったのです。
これまで五輪が開催されてきた先進国の例を見ても、こんなにお金をかける国はありません。そもそも、“国立競技場”という概念が不要で、アトランタにもシドニーにもロンドンにも国立総合競技場という施設はない。予算を抑えてメインスタジアムを造り、五輪が終われば改修工事をして、民間に貸し出す。そして利益を出して、費用を回収する、先進国はどこの国もそうしています。
それに対して、日本のハコモノは、いつまでも国が管理し、巨額の赤字を計上し続ける“コストセンター”になってしまっているのです。例えば、日韓ワールドカップのために建設した宮城スタジアムですが、ワールドカップ以降はほとんど使われず、県の所有物として毎年約5億円の赤字を出しています。本来、スポーツ施設は、そこから利益を生み出す“プロフィットセンター”でなければいけないのに、そうしたビジョンが全く欠けているのです。
新国立競技場も、五輪以降、どのように活用していくのか、建設費用をどうやって回収するのか、そうしたことが一切考えられていない」
後藤田さんは、代替案として約950億円で建設できるスタジアムを党内に提案している。
「オリンピック憲章には、財政負担を最小化し収益を生むことで持続可能なレガシー(資産)をつくることが定められています。また、安倍政権は成長戦略や、地方活性化、財政健全化を掲げています。 あの新国立競技場は、そのどれにも反しているのです。
私の代替案は、他の先進国と同様に、五輪が終われば改修工事をしてスタジアムを切り離し、それぞれプロ野球チームなど民間に貸し出せるようにすること。そうして利益を出して、地方の運動競技場や、体育館の設備を整え、スポーツを通じて社会を豊かにする、それこそが、スポーツに求められる役割のはずです。
(森喜朗)元首相や現首相が推進することに同じ党内から反対するのは確かに気が引けるのでしょう。でも、政治のあり方を考えれば、与党にいて力を持っている私たちこそが反対の意志を表明し、問題を注視していく必要があるのです」
※女性セブン2015年8月13日号