夏の甲子園大会で、日本中が注目する早稲田実業の怪物1年生・清宮幸太郎。予選の通算打率5割超というプレーだけでなく、彼の「ビッグマウス」に期待している人も少なくないだろう。
早実OBの斎藤佑樹(現日本ハム)の名言にひっかけて「持っているか」と記者に問われると「実力です」とサラリとコメント。身長184センチ、体重97キロの体躯とともに、貫録十分だ。
思えばその発言は入学直後から注目されていた。4月の公式戦でテレビカメラ6台に囲まれながらも「これから、こういう環境でやっていかなきゃいけない人間だと思っている」と全く臆する気配を見せず、初本塁打を放った。試合直後には「(高校通算本塁打は)80本くらい打ちたい」と高校通算60本塁打の松井秀喜を遥かに上回る“ゴジラ越え”を宣言した。
取材記者が舌を巻くのが幸太郎の物怖じしない落ち着いた受け答えだという。
「高校1年生は報道陣に囲まれると固まってしまうのが普通なのに、彼の場合は肝の据わった返事が飛び出してくる。ビッグマウスが嫌味にならないのはちゃんと結果が伴っているからでしょう。それに早実の先輩で甲子園のアイドルとなった荒木大輔や斎藤と違って、清宮の『ドカベン』のようなぽっちゃり体型に癒されるとの声もあり、見た目が“ゆるキャラ”なのもウケている要因です」(在京スポーツ紙記者)
たしかに、神宮球場のスタンドから盛んに声援を送っていたのは小学生や中高年の女性ファンが多かった。
「神宮球場は連日超満員。グラウンドに姿を見せただけで“清宮コール”の嵐となる。『北砂リトル~!』とリトル時代の所属チームまで連呼される高校球児なんて聞いたことがありません。
清宮が中学1年で4番を務めた日本代表の『東京北砂リトル』は米国で開催されたリトル世界選手権で優勝した。大会史上最長の94メートルの特大ホームランを放ち、現地メディアから“和製ベーブ・ルース”と称されたのが怪物伝説の始まりでしたからね。詰めかけた報道陣も初戦から20社以上という過熱ぶりです」(前出・在京スポーツ紙記者)
幸太郎の球歴は小学3年生から。それまでは4歳から父親・克幸氏(ラグビーのトップリーグ・ヤマハ監督)の影響で始めたラグビーに熱中していたが、以降は野球とラグビーの二足のワラジとなった。2008年当時の新聞記事によれば、克幸氏は「(幸太郎は)夏に甲子園に出て冬に花園に出る、といっている」と語っている。
幸太郎のビッグマウスは幼少期から始まっていたわけだが、花園はともかく、この頃から甲子園出場を口にし、その7年後に「有言実行」したことに驚く。こうした「ビッグマウスの遺伝子」は父から受け継がれたものだった。
※週刊ポスト2015年8月14日号