7月25~26日に放送されたフジテレビ『FNS 27時間テレビ2015』の平均視聴率は10.7%。1987年に番組がスタートして以降、歴代ワースト3となる大惨敗となった上、平成ノブシコブシの吉村崇が煽られた末に愛車BMWを踏みつけ破壊する演出には、批判が殺到するなどした。
大ブーイングを浴びた『27時間テレビ』は、フジに限ったことではなく、いまの民放地上波バラエティ番組の惨状を象徴していた。
各局とも「バラエティで数字が取れない」(キー局社員)ようになって久しいが、その傾向は今年に入って一段と強まっている。
4~6月末までのバラエティ番組(関東地方)で視聴率が20%を超えたのは、ともに日本テレビ系の『ザ!鉄腕!DASH!!』(5月24日放送)と、『世界の果てまでイッテQ!』(5月31日、6月7日、14日放送)の2番組のみ(ビデオリサーチ調査)。ベテラン放送作家がいう。
「2008年のリーマンショック以降、広告収入が頭打ちとなり、各局が真っ先に削ったのが番組制作費。ギャラの相場が下がり、ダウンタウン、とんねるずといった大物芸人の出演が少なくなった。発言力のある大物タレントが番組から消えた結果、プロデューサーやディレクターなど局側の人間の発言力が強くなった。
岡村が“育ての親”のK氏(『めちゃ×2イケてるッ!』を立ち上げたプロデューサー)に頭が上がらないのは有名な話です。出演者と制作側が対等な関係で意見を闘わせる場が少なくなれば、バラエティに活気が生まれるはずがない」
タレントとキー局社員の立場が逆転すると同時に、さらにその上に君臨するようになったのがスポンサーである。
スポンサー側が番組に寄せられた苦情内容までチェックするケースもあるという。クレームが多い番組からはスポンサーが降りかねないため、局主導で“安全運転”に終始した番組づくりが主流になっているというわけだ。
最近では、新しい番組の企画会議の席上、上司から「新しいことにチャレンジする必要はない」と最初に言い渡されることも多いという。以前にやったことのある企画なら、クレームも含めた視聴者からの反応もある程度予測できるからだ。
そんな官僚的前例踏襲主義が、文化や流行のリード役であるはずのテレビ局でも幅を利かせている現状には、ゾッとせざるを得ない。
※週刊ポスト2015年8月14日号