プロ野球選手にとってマイカーはステータス・シンボルである。目の肥えたファンは選手が乗る車を見て、身の丈に合っているかどうかも厳しく判断する。
例えば斎藤佑樹(日本ハム)は入団時、「プロで成功してカイエンに乗りたい」と発言していた。しかし結果が出ずファンからは“カイエン斎藤”などと揶揄された。それが最近スバル車とともに映る広告が出て話題になり、「渋いチョイスだ」「庶民派でいい」と好感度が上がった。
かつての一流選手は、大きくて派手なアメ車に乗るのが定番だったという。江本孟紀氏はこう語る。
「僕が南海に移籍した時、ノムさん(野村克也)はリンカーンに乗っていたし、阪神時代の田淵(幸一)さんはキャデラック。当時で700万円くらいしたんじゃないですか。僕らはタイヤ1本買えない年俸でしたけどね」
外車を選ぶ理由は、
「大きくて頑丈だからです。事故から身を守るため頑丈なアメ車に乗れ、と先輩からいわれました」(江本氏)
アメ車だった一流選手の証は、やがてドイツ車が主流になる。元近鉄の金村義明氏がしみじみと語る。
「僕が現役の頃にはベンツ、ロレックス、金のブレスレットがプロ野球選手の3点セットといわれましたね。まァ、僕がそれをようやく手にした頃は、時代が変わって“ダサい”といわれるようになりましたけどね」
他の選手が何に乗っているかは気になったようだ。
「選手名鑑を見て誰がベンツに乗っているか確認して、来年は抜いてやるぞと気合を入れたものですよ。清原(和博)なんか最初からベンツでしたからね。それも雨の日はベンツで、晴れた日はフェラーリ・テスタロッサですよ。こっちは必死こいてベンツを買ったのにエエ加減にせい、という感じでしたわ」(金村氏)
※週刊ポスト2015年8月14日号