夏休みにどこに行こう? もしまだ迷っていらっしゃるようでしたら、宮城県石巻市はいかがでしょう。今春、石巻は東京からグンと近くなりました。コラムニスト木村和久さんが高校卒業までを過ごした石巻を歩く「石巻なう」特別編の今回は、その感動の軌跡を綴ります。
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この日がやってくるのを、どれだけ待ちわびたでしょうか。仙台と石巻を結ぶ、JR仙石線が5月30日、4年3か月ぶりに全線開通となりました。いや長かった、これほど待たされるとは。実は津波の影響で、線路を移設して新しく造ったため、工事が延びていたのです。
もちろん開通当日、東京から新幹線に乗って、お祝いに駆けつけました。朝からなぜか、東京駅で豪華駅弁を奮発して買います。すこぶるハイテンションで、宮城路へ向かったのでした。
仙台から、新しくできた「仙石東北ライン」に乗ってみます。仙台と石巻を結ぶのが仙石線ですが、実は途中の松島まで東北本線が並行して走っています。そもそも仙石線はその昔、宮城電鉄という私鉄で、駅と駅との間隔が短いのです。だから駅が少なくスピードの出せる東北本線で、松島近辺まで来て、それから列車は仙石線を走るようにして、乗客の利便性を図ったのです。
この仙石東北ラインのために、JR東日本はハイブリッド車両なる新型車を導入しました。気合が入ってますね。始発の仙台から、結構な数のお客さんが乗車しています。なかには宮城ローカルのテレビクルーもいて、早くもテンションは高くなります。
石巻へ向かうとき、ちょうど松島あたりから、海が見え始めます。やがて、新しく移築した野蒜駅へさしかかろうとしたとき、隣にいたおばさんが、すっくと立ち上がり、遠くの海を見だしたのです。
「どうしたんですか?」とぼくが聞くと、
「震災のとき、野蒜の病院にいて、家族から死んだと思われたのよ。診察が早く終わったので無事だったけど、お互い連絡が取れるまで、生きた心地しなかったわ」
おばさんはそう言うや、涙ぐみながら「あ~、こうなっているのね~。まだ震災のままだわ」と感慨深げに、旧野蒜駅とその先に広がる海を見ていました。こちらも思わず涙ぐみ、お互いの震災苦労話を語りあいました。
いろんな思い、悲しみ、そして喜びを乗せて一路石巻へ。途中沿線からは、たくさんのかたがたが手を振ってくれています。終点石巻では、ちょうどアニソン歌手の水木一郎さんが、仙石線のホームで開業イベント中。水木さんが電車の発車の合図をかけたそうですが、かなりの人だかりができていて、もう何がなんだかわからない状態になっていました。
というわけで、めでたく開通となり、仙台と石巻間は、最短52分で結ばれました。以前は小牛田という駅を経由して乗り継ぎ、2時間弱ぐらいかかったでしょうか。当時は「東京~仙台より遠い、仙台~石巻」といわれていましたから。これでまた頻繁に石巻に顔を出せそうです。
※女性セブン2015年8月20・27日号