ビジネス

工芸品としても人気のガラスペン 不遇な時代を職人が語る

「佐瀬工業所 ガラスペン」(11.5mm)2万1600円

 光を通した軸のねじり模様が美しいアート作品のようなガラスペン。「佐瀬工業所 ガラスペン」(オリジナルひねり 透明・サーモンピンク<11.5mm>)は2万1600円の高級な逸品。

 ペン先をインク壺に入れると、瞬時にインクが溝に沿って吸い上げられていく。この毛細管現象を利用したペン先は、明治35年に風鈴職人の佐々木定次郎によって開発されたもの。インクを溝にためることで、1度インクをつけるとはがき1枚程度は書けることから、瞬く間にヨーロッパをはじめ、全世界に広がっていったという。

 佐々木定次郎の元で修業した佐瀬米蔵夫妻が、明治45年に独立、創業したのが佐瀬工業所。その2代目となる息子の佐瀬勇さんは、開発者の技術を直接受け継いだ唯一のガラスペン職人だ。

 今や工芸品としても人気のガラスペンだが、不遇な時代もあったと、勇さんは語る。

「ペン先にガラスを用いたガラスペンは、明治から日用品として庶民に至るまで日常的に使われていました。しかし、ボールペンなど新しい筆記用具の登場で、インク壺が使われなくなったことから、次第にペンも使われなくなり、作られなくなっていきました」

 そして、ペン先に使用していたガラス棒の在庫を大量に抱えた勇さんは、平成元年、これを軸にも使用し、ペン先から軸まで一体のガラスペンを考案。ペン先作りの作業を応用し、ひねり模様を作ることで、美しいデザインペンを仕上げた。

「ガラスペンに加工する際は、棒を均等に熱し、芯まで溶けた瞬間の見極めが大切です。特に8本の溝をペン先までしっかり通すには、息をとめて炎からまっすぐ一気に引くこと。油断すると溶けて溝がなくなり、均等にインクが上がってこなくなる。何年やっても気が抜けないね」(勇さん)

 すべて手作業で行うため、ひねり模様に微妙な差が生まれ、1つとして同じものはない。同様の材料によるペン置き(864円)も人気だ。

 モノには魂が宿るというが、こんな美しい筆記具なら、心のこもった文字が書けそうだ。

※女性セブン2015年8月20・27日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

有村は春子の幼少期を演じた(NHK スクエア)
《オークションサイトに大量出品》有村架純が使用した『あまちゃん』台本が流出、所属事務所は「本人も胸を痛めている」 意外な“出品ルート”も明らかに
NEWSポストセブン
事件が起きてから数日、犯人はまだ捕まっていない(時事通信フォト)
《女子中学生の父親が警察署長情報はデマ》北九州ファストフード店事件をめぐる一連の憶測投稿に当該警察署は「事実ではない」
NEWSポストセブン
不倫旅行を終え、ホテルから出てきた2人
「ホテルというかあれですね…」二階俊博・元自民党幹事長の三男・伸康氏、銀座のバーのママとの不倫旅行スキャンダル 直撃取材に“現在の妻と離婚協議が最終段階”
NEWSポストセブン
1988年、『You're My Only Shinin' Star』で「第30回日本レコード大賞」金賞を受賞した中山美穂
【入浴中に不慮の事故】中山美穂さん、行きつけの焼肉店での”素の表情” 「いつも元気で素敵なまとめ役」だった 母と再婚した義父とも良好な関係
週刊ポスト
前途多難の国民の力代表・韓東勲氏(中央、時事通信フォト)
韓国戒厳令の後始末に奔走した与党「国民の力」韓東勲氏の娘に「MIT不正入学」疑惑 剥いても剥いても疑惑が出てくる“タマネギ男”が追及する泥仕合
週刊ポスト
取材に応じた「釜ヶ崎地域合同労働組合」委員長の稲垣浩氏(筆者撮影)
大阪・西成“あいりん総合センター”建て替えで路上生活者が「強制退去」 抗議活動を行う武闘派労働組合委員長が告白
週刊ポスト
中国発の飲食チェーンである「楊国福マーラータン」のマーラータン(麻辣湯)
〈キモすぎガチで声出た〉虫混入騒動の人気麻辣湯専門店、店員は「虫は野菜に入ってた。洗っているし今はもう大丈夫」実際は乾麺に…運営会社は「調査が終わっていない」と回答
NEWSポストセブン
田村瑠奈容疑者の猟奇的な側面が明らかになってきている
頭部切断事件・田村瑠奈被告(30)は自分の頬に切り込みを入れ…“あちらの世界”の恋人・ジェフの存在と“禍神さまの修行”
NEWSポストセブン
二階俊博・元幹事長の三男・伸康氏が不倫していることがわかった(HP/Instagram)
二階俊博・元自民党幹事長、“後継者”三男・伸康氏の不倫にコメント「知りません」 お相手女性の両親にはすでに“公認の仲”
NEWSポストセブン
北九州市の「マクドナルド322徳力店」で、中学生の男女2人が男に刃物のようなもので刺され、女子中学生が死亡した
《北九州市ファストフード2人死傷》女子中学生(15)は苦しそうにうずくまり…被害者の知人は慟哭「すごく真面目で可愛いくて、家族思いで…それだけはわかってほしい」
NEWSポストセブン
結婚後初めての誕生日を迎えた真美子夫人
大谷翔平、結婚後初の真美子さんのバースデーで「絶景」をプレゼントか 26億円で購入したハワイの別荘は青い海と白い砂浜を堪能できるロケーション
女性セブン
司忍組長も姿を見せた事始め式に密着した
《山口組「事始め」に異変》緊迫の恒例行事で「高山若頭の姿見えない…!」館内からは女性の声が聞こえ…納会では恒例のカラオケ大会も
NEWSポストセブン