日本の社会保障制度は「公的差別」の宝庫といわれる。例えば「勤続1年未満」だと失業保険をもらえないというのも、その好例である。
非正規雇用が増え、アルバイトやパートでも「週20時間以上の勤務で雇用期間が31日以上」なら雇用保険への加入が義務付けられている。しかし失業手当を受け取る条件である勤続1年以上のハードルに阻まれて、受給できないケースは少なくない。
実は、以前はここまで厳しい線引きはされていなかった。バブル崩壊後の長いデフレ期間に失業率が高止まりし、失業保険の財源が激減したため、厚労省は「会社都合」と「自己都合」で失業手当の給付期間に大きな差をつけ、それまで勤続6か月以上だった受給資格を「1年以上」に延長するなど次々と受給条件を厳しくしてきた。
その結果、いまやサラリーマンが払う雇用保険の積立金は過去最高の6兆円に達し、使い切れなくなっている。しかし、その制度を見直す動きはない。
制度変更に動かないのは役人の利権維持のためだ。厚労省は公的差別を温存することで失業給付を減らし、独立行政法人「高齢・障害・求職者雇用支援機構」や「介護労働安定センター」などの天下り団体の運営資金に回しているのである。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号