自動車に乗るときに不安を感じることは少ないが、飛行機に乗るときは、つい「今日こそは落ちて死ぬかも」と思う人は多いのではないか。
英航空安全財団の調べによると、2013年までの過去10年間に「全世界」で起きた航空機事故による死者数の年平均は676人。少々無理のある計算だが、世界人口を70億人とすると、10万人当たりの死者数は0.0097人となる。
一方、「日本」の交通事故での死者数は、警察庁の発表では、2014年で4113人。10万人当たりの死者数は3.2人だ。この数字だけでも、圧倒的に飛行機のほうが死ぬ確率が低いことがわかる。
ただ、交通事故は自分が路上でひかれるケースもあり、万人に関係するが、飛行機は乗る人だけに関係するリスクである。
そこで、航空アナリストの杉浦一機氏は、別の尺度の死ぬ確率をあげる。
「国際航空運送協会がジェット旅客機が事故を起こす確率を発表しており、2013年の数字は100万便につき0.41回でした」
仮に、週1回1往復(2回搭乗)し、年104回乗る人でも、事故に遭う確率は3900年に1回。途方もなく低い確率だ。
長距離移動の場合は車より飛行機を選んだほうが安全だ。
『リスクにあなたは騙される』(ダン・ガードナー著、ハヤカワ書房)によれば、9.11同時テロのあと、米国では人々が飛行機の利用を避けて車を選ぶようになり、交通事故死が急増したという(1年後に元に戻った)。移動手段を飛行機から車に替えたことで増えた死者数は1595人と推定されている。
ちなみに、「鉄道は安全」とのイメージがあるが、ホームへの転落などを含めると毎年300人前後、1日に1人弱が亡くなっている。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号