永田町では内閣支持率について「30%台で黄信号、20%台は危険水域、20%割れで退陣」といわれる。最近の首相の政権末期の支持率を見ると、麻生内閣(18%)、鳩山内閣(17%)、菅内閣(14%)と20%を下回ったところで退陣に追い込まれている(支持率は朝日新聞の数字。以下同)。
もっとも、古くからそうだったわけでもない。「自民党一党独裁」と呼ばれた長期政権時代には、「総理たちは支持率を『あんなの新聞の人気投票だ』と気にしなかった。選挙で野党に政権を奪われるなんて考えていなかったからだ」(自民党議員OB)という。
自民党初代総裁の鳩山一郎首相から1993年に下野する宮沢喜一首相まで15代の内閣の支持率は軒並み低く、発足時に全紙50%を超えたのは庶民宰相と呼ばれた田中角栄首相しかない。
変わったのは自民党から政権を奪い、71%という空前の高支持率でスタートした細川内閣からだ。当時、ブレーンの1人は、「細川(護熙)さんは支持率が50%を切ったら辞める」と予言し、周囲の誰も信じなかった。
ところが、その通りに細川首相は就任8か月後に支持率が50%を割った途端に退陣を表明した。この細川政権で小選挙区制が導入され、「政権交代の時代」になると、時の総理は支持率に一喜一憂し、与党議員も自分たちの当落に影響する支持率で首相の評価をするようになった。
ただし小渕内閣は25%の赤信号でスタートしながら徐々に支持率が上がり、森内閣のように発足時の40%から批判の中で一桁(9%)まで粘ったケースもある。
そこでもう一つバロメーターとして政界で注目されるようになったのが、「落胆率」だ。高かった支持率が短期間に急降下することは「ジェットコースター現象」と呼ばれるが、その下落幅は国民の落胆度を表わしているという意味だ。
わずか9か月間で支持率が50%以上(71%→17%)も下落した鳩山内閣が代表例で、近年の短命政権はいずれもジェットコースター現象で政権から滑り落ちた。
第2次安倍内閣は発足から2年半、高い支持率を維持したものの、安保法案の強行採決をきっかけに直滑降を始めている。このまま沈んでいくのだろうか。
似た支持率推移をたどったのが橋本内閣だった。発足から1年半は50%以上の支持率を保ったが、内閣改造でロッキード事件で有罪判決を受けた佐藤孝行氏を入閣させたことで一気に20%近く急落、そのまま参院選に敗北、退陣に至った。
逆に急落から持ち直したケースもある。政権発足時に歴代最高の78%の支持率を誇った小泉内閣は、田中真紀子外相更迭でわずか1年後には49%に急落したが、首相の電撃訪朝でV字回復させて長期政権となった。
果たして安倍晋三首相は橋本、小泉どちらの道を辿るのか。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号