経営者の報酬の高額化が顕著だ。本誌は東京商工リサーチの協力を得て、2014年度(2014年4月期~2015年3月期決算)の有価証券報告書の公開データを基に「役員報酬」と「株主配当」を合計した「本当の年収」を独自に算出し、ランキングを作成した。
役員報酬のみのランキングでトップなのはオリックス元会長の宮内義彦氏(現シニア・チェアマン。慰労金含めて54億7000万円)だが、このランキングでは3位となる。
宮内氏を大きく引き離しての1、2位となったのは、ソフトバンクグループの孫正義・社長(57)とファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長(66)だった。「役員報酬総額」ではそれぞれ275位と67位。収入の95%以上を株主配当が占めているのだ。
孫氏は93億円、柳井氏は71億円。いずれも「資産」ではなく「年収」だから驚愕の数字である。
それ以外も、パチンコチェーン大手のセガサミーホールディングスの里見治・会長兼社長(5位=18億2200万円)、トヨタ自動車の豊田章男・社長(9位=12億7100万円)、スーパーマーケットを運営するヤオコーの川野幸夫・会長(8位=12億8600万円)、など役員報酬ランキングではトップ10圏外だった経営者が大きく順位を上げている。いずれも創業家の一員として大株主でもある経営トップだ。102位には、大塚家具の大塚勝久・元会長(2億5100万円)の名前もある。
その一方で6位に入ったソフトバンクグループ取締役のロナルド・フィッシャー氏(17億9100万円)や日産のカルロス・ゴーン・社長兼CEO(11位=11億3800万円)など、高額な役員報酬を受け取る“プロ経営者”が増えたことも一つの潮流といえる。
その代表格は孫社長が米・グーグル社から自らヘッドハンティングしたソフトバンクのニケシュ・アローラ・副社長(47)で、今年3月までに165億5600万円の報酬を支払ったと報じられた(2015年3月期時点では取締役でないため今回調査の対象外)。
また見逃せないのは、役員報酬と株主配当にかかる税金の違いだ。役員報酬は最大55%(所得税+住民税)が課税されるが、配当は「源泉分離課税」と呼ばれる仕組みを選択すれば、約20%で済む。つまり配当で受け取った方が得なのだ。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号