寄席で演者が出番を終えて引っ込むと、前座が出てきて座布団をひっくり返す。これを高座返しといって、次の演者を迎える準備である。さて、1966年にスタートし、来年50周年を迎える『笑点』(日本テレビ系)に、前代未聞の“高座返し”騒動が持ち上がっている。
理由は2006年から5代目司会者として番組の“顔”を務めてきた桂歌丸(78)の体調問題だ。日テレ関係者が話す。
「笑点は局側の意向が反映されにくい“治外法権番組”なんです。この20年間、演芸と大喜利という同じ内容で平均視聴率20%近くをキープしてきた。それはひとえに出演者の功績。
番組内容や出演者の人事に関して局側の人間はなかなか口を出しにくい。しかし、近年、歌丸師匠の体調が芳しくないため、局としても“そろそろ本気で次を考えなければいけない”と、秘かに新司会者候補の検討に着手しました」
日テレ側が心配するのも無理はない。今年6月、歌丸は背部褥瘡(床ずれ)で入院。手術は成功して退院したのも束の間、すぐに腸閉塞のため再入院した。昨年も慢性閉塞性肺疾患と肋骨骨折、帯状疱疹などで入退院を繰り返していたこともあり、周囲は不安を募らせていた。7月11日の退院直後に会った知人はこういう。
「腸閉塞での入院は痩せすぎで血管が腸を圧迫したのが原因でした。もともと40kg台の痩身は入院で30kg台半ばにまで体重が落ち、さすがに憔悴して見えた。基本的に移動は車椅子で、万が一に備えて酸素ボンベも携帯しています。
ただ、いまは茶碗一杯のご飯を平らげるほど食欲は戻っています。師匠は神奈川県横浜市の出身で、現在も住み続けている生粋のハマっ子。最近も中華街にある馴染みの店でラーメンを啜っていました」
8月8日には、『笑点』の収録に復帰。同11日には東京・国立演芸場の「8月中席」で、約50分間の「怪談乳房榎」を演じる予定で、“復活”を印象付けている。
放送開始から大喜利メンバーとして活躍してきた『笑点』への思い入れは強く、近しい人間には記念すべき50周年に向けて「絶対に司会を続ける」と意気込みを語っているという。ただし日テレ側の思惑は別にあるようだ。
「歌丸師匠の復帰は喜ばしいことですが、不安は拭えない。今後を見据え、局側として“ポスト歌丸”の準備だけはしておこうと判断しています。
というのも、この番組に不測の事態は許されない。日曜夕方5時半から始まる『笑点』は、その後に続く『ザ!鉄腕!DASH!!』(同夜7時~)、『世界の果てまでイッテQ!』(同夜7時58分~)という視聴率20%を連発する超人気番組へ視聴者をいざなうゴールデンコースの起点。
『笑点』の最大の強みである“不動の安定感”に揺らぎがあってはならないのです」(日テレ関係者)
※週刊ポスト2015年8月21・28日号