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やんジー提唱者 「定年後はやりたいことをやる最後の好機」

「やんジー」の生き方を提案する雑誌『MADURO』の岸田一郎編集長

「下流老人」―耳にしただけで気が滅入りそうな言葉が、すっかり流行語になっている。日本福祉大学客員教授・近藤克則氏の研究によると、生活保護受給レベルの「下流老人」は年収250万円以上の人に比べて、最大で3.5倍も死亡率が高いというデータがある。さらに「うつ状態」についても、「下流老人」は年収250万円以上の人たちに比べて、平均で約5倍多く、とくに男性では6.9倍にも達した。

 もちろん「お金がないから、医者に行かない」ことも影響しているのだろうが、うつ状態が多いことには精神的なストレスも影響しているはずだ。

 長年のサラリーマン生活を勤め上げ、退職金も年金もちゃんと貰えるはずのシニア層まで「自分も下流老人になるのでは」という恐怖に苛まれているから困ったものだ。

 定年を迎え、残り少ない人生をどう楽しむかという時に、下流老人になることを恐れて退職金に手をつけず、趣味らしいこともせずにケチケチ生きる──これではまるで“精神的下流老人”ではないか。

 そこで本誌が提案するのが「不良老人」のススメである。不良老人になることは、実は精神的下流老人にならないための何よりの防衛策なのだ。

“やんジー=やんちゃなジジイ”の生き方を提案する中高年男性向け雑誌『MADURO』の岸田一郎編集長がいう。

「いまのシニア世代は、昔のジジイとは違います。高度経済成長のなかで育ち、バブルも経験した。暮らしも遊びもいい経験をたくさんしてきたから、かっこいいジジイがたくさんいる。医学が発達して体も元気だし、ED薬の恩恵もある。だから自信をもってほしい。後先ばかり考えて何もしなかったら、本当に精神的下流老人になってしまいますよ。定年後は、若い頃にやりたくてもできなかったことをやる最後のチャンスなんです」

 不良老人として生きるにはそれなりにお金もかかりそうだが、それも工夫しだいだ。3年前にメーカーを定年退職したAさん(68)が活用しているのは“裏の退職金”である。

「3000万円ほどあった退職金のうち2000万円は妻と私に、残り1000万円は銀行に自分しか知らない別口座を作ってそこに振り込みました。この裏の退職金を使って、ゴルフや麻雀、スナック通い。最近では定年後、初めて体験したデリヘルにハマッています。もう半分くらいは使ってしまいましたが、これまでできなかったお金の使い方が思う存分できて、最高に幸せです」(Aさん)

 妻に内緒の不良老人生活はこの上なく楽しそうだ。もちろんAさんほどのお金がなくても、不良老人を謳歌することは可能なはず。

「不良老人をめざすことで心が自由になり、将来への恐怖や不安からも解放されるのでは」と岸田氏。そう、まずは残りの人生を存分に楽しむこと。それが不良老人への第一歩なのだ。

※週刊ポスト2015年8月21・28日号

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