首都圏では新築マンションの価格上昇に伴い、比較的割安な中古マンションの価格も跳ね上がっている。『やってはいけないマンション選び』の著者である住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、「バブル期のマンションは無理をして買う必要はない」と言い切る。
この夏、住まい探しで「購入」か「賃貸」かを迷っている人は、最新の不動産市況を踏まえた榊氏のアドバイスを参考にしてみてはどうか。
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新築マンションの価格が高くなった。東京の都心では3年前に比べて倍近くに値上がりしていることも珍しくなくなっている。
ただ、都心から離れれば離れるほど値上がり幅は縮小し、遠隔郊外では下落傾向がまだ続いている。大阪でも建築費の高騰分が値上がりしているが、バブルと言うほどでもない。地方になると、都心のバブルなんてまったく関係ないところがほとんど。
その他、京都市内の御所周辺や仙台市全域、福岡市の一部などがバブル的に値上がりしている。しかし、これらは特殊事情。日本全国でみれば、バブル化しているところはほんの一部。面積にすれば2%もないだろう。
バブルはいつか弾ける。そして、値上がりした分は短期間で値下がりする。これは今まで2回の不動産バブルの辿った道筋だ。こういった時に、東京の都心や近郊エリアではマンションを買うべきなのか、それとも賃貸で待つべきなのか。私は一般の購入希望者からよくそういった相談を受ける。
そもそも「購入VS賃貸」というのは神学論争のようなものだ。どちらかがよいという考え方も、それなりに根拠はある。
駅などで置かれている無料の住宅情報誌などでは年に何回も同じような特集を組んでいる。だいたいは「買った方がいい」という結論になるのが普通。当たり前である。新築マンションの広告で経営が成り立っている無料誌が「買うな」とは絶対に書けない。
今のようにバブルな時には賃貸の方が得な場合が多い。最近、相談を受けたケースからシミュレーションしてみよう。
ある都心近郊のタワーマンション中層階。約80平方メートルの住戸が7400万円で売りだされている。坪単価にすると305万円。3年前なら山手線の内側で当たり前のように買えた水準である。私の見たところ、約15%は実力以上のお値段になっている。
このマンションは15年後にいくらで売れるだろうか。そんなことは誰にも分からない。しかし、15年後の東京は人口減少が始まってすでに10年。今とは住宅購入の風景がガラリと変わっているだろう。
賃貸住宅は空室だらけ。売り出されている中古マンションの住戸数は今の軽く2倍。新築マンションはほとんど供給されなくなっているはずだ。
これは私が勝手に考えている想像ではなく、人口と世帯の減少や今後の住宅供給数を考えれば導かれる自然な答えだ。そうなった場合、住宅価格や賃料は当然の如く需要と供給の関係で決まっていくはず。まず明らかな供給過多である。
今回想定しているマンションは地下鉄のメジャー路線から徒歩5分で、都心へも10分ちょっと。資産性はまずまず安定しているから暴落ということはない。現在のバブル分を除いた実力価格の35%減と考えたい。すると約4080万円。購入価格よりも3020万円ほど落ちている。
ここで売却したとしよう。15年間の管理費・修繕積立金、固定資産税、さらには売却の仲介手数料を入れて987万円ほどかかる。実損額は4007万円。ただし、ここにローン金利は入れていない。キャッシュで買った場合だ。