クレジットカードの知っているようで知らないカードの常識。クレジットカードに書くサインは、漢字とローマ字どちらが適切なのかを消費生活評論家の岩田昭男さんに聞きました。
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この時期、海外旅行を予定している人も多いでしょうが、旅行先でクレジットカードを使う時、サインには注意が必要です。日本ではサインの慣習があまりないので、クレジットカードを使う際もそれほど関心を払わないと思います。
しかし、海外はサイン文化が浸透しているので、カード利用時に求められるサインへの対応を誤ると、面倒なことになりかねません。
数年前に友人が米国へ旅行した時の話です。フロリダ半島奥地のFという町にやってきました。めったに日本人観光客は訪れず、住人の多くは漢字など見たこともないというような町でした。
友人はそこのショッピングモールに出かけて、スポーツシューズをクレジットカードで買おうとしました。すると、カードの裏側のサインと伝票のサインが違うということで、トラブルになったそうです。
カードの裏側のサインパネルには「田中」と漢字で書いてあるのに、伝票には「TANAKA」とアルファベットで書いたため、同一人物ではなく、他人の不正利用ではないかとみられたのです。
この事件の噂はすぐにモール全体に広がり、他の店からも店員や客が続々と見物に訪れ、黒山の人だかりになりました。警察に連絡する一歩手前までいったそうですが、幸いにも友人はパスポートを持ち歩いていたので、そこにあるサインとの照合ができて、他人の不正利用という疑いは晴れたといいます。
こういう事件は、「サインはクレジットカード利用の確認」くらいにしか思わない日本ではまず起こらないでしょうが、一歩国を出ると、クレジットカードの取り引きはサインで動いているといってもよいくらい重要なものです。
店員は取り引きの際に必ず伝票に書かれたサインとカード裏面のサインを見比べて、本人が利用しているかどうかを確認します。ですから、少しでも不審な点があると、フロリダのような騒ぎになってしまうのです。
では、すでに使用中のカードのサインが日本語の場合、わざわざ新しいカードを取り寄せてローマ字に変更すべきなのかというと、そんなことはありません。カードにサインが漢字で書いてあるなら、店で署名する時もそのサインで通します。カードにある字体と、伝票の署名とが一致していればよいのです。
そして、先のエピソードからもわかるように、海外旅行では常にパスポートを携帯することが大切です。何か問題が起きても、パスポートのサインと照合してもらえば本人だと確認ができます。パスポートは海外旅行で何かあった時の最後の砦になってくれますから、大切に扱いましょう。
海外へお出かけの際は、トラブルに巻き込まれないようくれぐれもご注意ください。
※女性セブン2015年8月20・27日号