牛の生レバーに続いて、豚の生レバーの飲食店での提供も今年6月から禁止され、悔しい思いをしている生レバーファンは多い。
しかし、食品衛生の専門家らは、豚の生レバーを食べるなんてありえないと口をそろえる。昔から「当たったら死ぬ食べ物」の代表はふぐだが、豚の生レバーとふぐでは、どちらが死ぬ確率が高いか。
豚の生レバーが危険なのは、E型肝炎ウイルスに感染して死ぬ可能性があるからだが、実は死ぬ確率までははっきりしていない。原土井病院の酒井健司医師が試算のために、次の数字をあげる。
「市販の豚レバーの1.9%がE型肝炎ウイルス陽性だったという調査結果があります。新鮮かどうかは関係ありません。それを食べた場合の感染率ははっきりしないが、集団発生の例があるのでかなり高いはず。
しかし、感染しても発症しないこともあり、WHO(世界保健機関)の調査では発症率は15%ほどで、発症者の死亡率は0.5~4%です」
そこで編集部で試算してみた。ウイルス感染率を50%、日本は先進国なので発症者の死亡率を最低の0.5%と仮定すると、10万人が豚の生レバーを食べた場合、E型肝炎を発症するのは142人で、そのうち、死亡するのは0.71人となる。
決して高い数字ではないが、豚の生レバー食を放置していれば、いつか必ず食中毒事件が起き、死者も出たかもしれない。
一方のふぐ。ふぐの内臓に含まれるテトロドトキシンという神経毒は、青酸カリの1000倍以上の毒性がある。2002年から2011年までの10年間で、ふぐの食中毒患者は全国で454人で、そのうち死者は21人。年平均で45人がふぐに当たり、2.1人が死んでいる。
豚の生レバーの数字と比較するには、「食べた人10万人あたりの死者数」を出す必要があるが、日本のふぐ食人口が調べても出てこない。
判明したのはふぐの出荷量で、平成23年で6286トン。そこで、概算になるが、内臓の処理分や破棄分を除外し、このうち2割が人の胃袋に入るとし、1食分を200グラムと仮定すると、年に約630万人分と算出された。死者数は年に2.1人なので、10万人あたりの死者数は0.033人となる。
「家庭で調理するのではなく、ふぐの調理免許を持つ人がいる飲食店で食べる限り、ふぐのほうが安全といえるでしょう」(酒井医師)
※週刊ポスト2015年8月21・28日号