今年6月支給分の年金から、「マクロ経済スライド」が発動された。これは物価が上がっても受給額は調整されて上がらない、いわば「年金を自動的にカットする仕組み」だ。
公的年金の価値が減らされる以上、まず考えるべきは、働きながらプラスαとなる“自分年金”をつくることだ。年金博士としてお馴染みの社会保険労務士・北村庄吾氏はこういう。
「老後資金の運用は大きなリスクを取らないことが鉄則です。働きながら運用するなら、利回りだけでなく『節税効果』に着目すべきでしょう。その意味では、個人型401k(確定拠出年金)を活用するのがいい。節税メリットが非常に大きく、60歳以降に継続雇用で働く人も加入できます」
個人型401kとは、自ら預貯金や投資信託などの運用先を選んで毎月一定額を金融機関に払い込み、その運用の結果次第で将来の“自分年金”受給額が決まる仕組みである。
これまでは、勤め先の会社に企業年金(厚生年金基金)がないサラリーマンや、自営業者など個人事業主だけが加入できる仕組みだった。
しかし、今国会に提出されている改正案が成立すると、2017年1月からその対象者が大幅に拡大される。専業主婦や公務員に加え、勤め先の会社に企業年金があるサラリーマンも加入できる仕組みになる。個人型401kの最大のメリットが節税効果だ。
「掛金を『支払う時』『運用している時』『受け取る時』の3 回にわたって節税効果を得られます。掛金は全額所得控除が受けられ、運用益は非課税となります。受給の際にも公的年金等控除が適用されます」(北村氏)
たとえば、年収500万円(所得税・住民税を合わせた税率は20%)の人が月額2万3000円(サラリーマンの個人型401k拠出金上限)を積み立てた場合、本来納めなければならなかった税金を約4万~5万円減らせる(年額。確定申告すると還付される)。50歳から始めたとして、60歳までの10年間で40万~50万円も得になるのだ(家族構成などで異なる)。
月額2万3000円を50歳から10年間、タンス預金で積み立てたとしても276万円にしかならないが、個人型401kを使って年2%で運用できれば10年で約300万円に増える。約30万円の運用益に税金は一切かからない。
そうした運用ができれば、65歳から80歳まで、毎月約1万7000円のプラスαの“自分年金”を受け取れる。
ただし、個人型401kで運用した資金は原則60歳以上でなければ引き出せず、個人年金保険にある解約返戻金のような制度がないことに注意したい。個人型401kを扱う金融機関は約150社ある。各社の商品設計は国民年金基金連合会HP内の「個人型確定拠出年金」サイトの「運営管理機関」で確認できる。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号