中国共産党中央は趙克志・貴州省党委員会書記の後任に陳敏爾・同省長を昇格させる人事を決めた。陳氏は、習近平国家主席の浙江省党委書記時代に宣伝部長として仕えた元側近で、1960年9月生まれの54歳。
1960年以降に生まれた世代を総称する「60後」グループのなかで省トップの座に就いているのは、すでに党政治局入りしている胡春華・広東省党委書記と孫政才・重慶市党委書記に次いで3人目。それだけに、「習近平閥」のなかでも、ニューリーダーの筆頭とみられ、ほぼ2年後の2017年の第19回党大会で党政治局入り可能性が取り沙汰されている。
陳氏は浙江省生まれで、習氏が2002年に浙江省トップとして赴任した際、省宣伝部長を務めており、習氏が浙江省党委機関紙「浙江日報」にペンネームでコラムを寄稿する手配を整えた。
毎週連載されたコラムは習氏が党トップに就任後、「之江新語」とのタイトルで書籍として出版され、習主席の重要思想として、現在、全国の党幹部の学習用教材となっている。
このため一部の香港紙はコラム名から習近平閥のことを、習氏が浙江省や福建省のトップだったころの側近らのグループを表す「之江派」と名付けている。そのなかでも、陳氏は若手の有力メンバーとなっている。
このほか、浙江省時代の側近で、現在の有力幹部として挙げられているのが、元同省党委副秘書長の舒国増・党中央財経指導弁公室副主任や元寧波市党委書記の黄興国・天津市党委書記代理、元浙江省党組織部長の蔡奇・中央国家安全委員会秘書長、元杭州市党委書記の黄坤明・党中央宣伝部常務副部長ら。
また、人民解放軍の組織としては、浙江省や福建省は南京軍区に属するが、習氏がトップ当時の同軍区幹部で、之江派に属しているのが、王寧・武装警察部隊司令官、宋普選・北京軍区司令官、苗華・海軍政治委員らが挙げられる。
これらの動きについて、『習近平の正体』や『習近平の反日作戦』(いずれも小学館刊)の著書があるジャーナリストの相馬勝氏は次のように解説する。
「党や軍高官の大幅な人事異動が行なわれる第19回党大会まで2年あまりと迫っており、習氏は反腐敗キャンペーンで、上海閥や共青団閥の幹部を失脚に追い込む一方で、党中央や政府、地方政府の幹部を取り込んで『習近平閥』を形成しており、之江派が主にニューリーダーの中心的な存在となりつつある」