球界の重鎮たちに現在の野球はどう映っているか。巨人OBで西武の黄金時代を築いた広岡達朗氏(83)が今のプロ野球界にもの申す。広岡氏は新国立競技場の問題でも取り沙汰された「責任感のなさ」が球界にも蔓延していると指摘する。
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結局日本は責任の所在が曖昧なんですよ。メジャーでは補強の問題はGMの仕事になりますが、日本では誰がその責任を取るのかが分からないことが多い。
獲ってきた外国人選手が働かないとなれば外国人選手担当をクビにすればよい。確かに巨人は今年、外国人が働かないことを理由にGMをクビにしましたが(5月、GMを兼任していた原沢敦球団代表がGM職の兼任を解かれた)、その後も性懲りもなく変な外国人選手を獲っている。結局、責任問題が曖昧なまま。
最近来たヤツ(カステヤーノス)はなんですか。来たばかりなのに婚約者の出産のために帰国する? 契約に盛り込まれていたのかもしれんが、舐められているんですよ。
そうした責任を現場の監督に任せるのか、GMを置くのか、球団がハッキリさせるべきです。東京五輪の新国立競技場の建設費が、知らない間に2500億円にも膨らんで、その責任の所在が分からないまま白紙撤回を決める。政府とまったく同じ構造ですよ。
責任の所在が明らかになれば、おのずと育成にも力が入ります。皆、弱いチームにはFAでいい選手は来ないから強くなれない、と考えているようですが、これは大きな勘違い。弱いチームの選手はチャンスなんです。弱いからこそ監督やコーチがしっかりと指導して、いい選手を育てるという方針を打ち出しやすくなるのですから。
強い選手がいないから勝てないのではなく、いい選手を育てようとしないから勝てない。その原点にもう一度戻るべきなんです。
●ひろおか・たつろう/1932年、広島県生まれ。現役時代は巨人で活躍、引退後は巨人・広島でコーチを経て、監督としてヤクルトを球団初の優勝・日本一に導く。その後西武監督として4年間で3回の優勝。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号