認知症と聞いて、「まだ若いから大丈夫」と思っている人も、人ごとではない。認知症の原因となる脳の変化は、なんと、認知症を発症する数十年前から始まっているのだ。
現在、認知症の予防に効果的といわれているのが、「運動」「知的活動」「食事」の3つをトータルで実践すること。予防だけでなく、MCI(軽度認知障害)や認知症の進行を遅らせる効果もあるという。
その中で、遊びながら記憶力や集中力を鍛えられる知的活動が、パズルやドリルといった脳トレーニング(脳トレ)だ。諏訪東京理科大学教授で脳科学者の篠原菊紀さんは次のように説明する。
「脳トレでワーキングメモリ(作業記憶)と呼ばれる脳の働きを使うと、神経伝達物質であるドーパミンの受容体が増え、知的活動の中核である前頭前野が刺激されることがわかっています」(篠原さん。以下「」内同)
実際、脳トレ、食事、運動、血圧などの健康管理を行ったグループと、そうでないグループとでは、認知機能テストの成績や物事を見てから反応するまでの速度に、大きな差があったことも報告されているという。
「大切なのは、達成感を感じられるくらいの難易度の脳トレを行うこと。難解すぎる必要はありませんが、逆に簡単すぎると脳に負荷がかからないので、トレーニングをしても効果はありません」
認知症の予防には、3つの方法がある。
まず1つは運動。散歩よりややきついと感じる程度の速さでのウオーキングを、1日30分以上、週3日以上を目安に継続して行うと効果が出やすい。有酸素運動は、アルツハイマー型認知症の原因であるアミロイドβタンパク質の脳内への蓄積を防ぐだけでなく、記憶をつかさどる海馬の神経細胞の増加を促すといわれる。
2つめは知的活動。人とおしゃべりしたり、将棋、麻雀など他人と競い合うゲームをするなど、コミュニケーションを必要とする「ちょっと疲れる」くらいの活動が、脳の働きを活性化する。パズルやドリルなどの脳トレも、一人でやるよりも、家族や友達と点数を競い合いながらやるほうが効果的。
3つめは、食事だ。カロリーの摂りすぎ、食べすぎに注意し、食事をするときはゆっくりと食べること。早食いは血糖値の急上昇、インシュリンの過剰な分泌につながり、脳の機能を低下させる要因に。また、脂肪が貯まると、脂肪細胞が分泌するレプチンが脳にダメージを与え、認知症を引き起こすこともある。
※女性セブン2015年8月20・27日号