「下流老人」や「老人うつ」といった言葉が最近取沙汰されているが、その反対の「不良老人」という生き方もある。「不良老人」の醍醐味として、好きなことのために、自由にかつ大胆にお金を使ってみるのもいい。“やんジー=やんちゃなジジイ”の生き方を提案する中高年男性向け雑誌『MADURO』の岸田一郎編集長によれば、「うちの雑誌でも、クルマ特集やバイク特集をやるとよく売れる」という。
実際にシニア世代がバイクや改造車に乗っている姿は、決して珍しくない。
「改造車に乗る中高年世代の人、増えてますよ。自分の自由な時間ができて、若い頃好きだった車に乗ろうと思った時、彼らにとっては最近の車だとすごく違和感がある。コンパクトカーやハイブリッドカーは燃費優先の設計で、いわゆる“走り”を追求していないから、物足りないんです。エンジンの回転数とか、ターボチャージャーの音とか。それで『満足できない』という中高年世代の人が、改造車の世界に入ってきている」(自動車評論家の稲田大二郎氏)
女の子はカッコいい車が好きだから、改造車に乗っていると“モテる”という副産物までついてくる。一方、66歳にして大型二輪免許を取得し、今年2月には“ハーレー・ダビッドソン・デビュー”を果たしたのが、野球評論家の江本孟紀氏だ。
「バイクに乗るのは現役時代からの夢だったんですよ。現役の時は契約で危険な行為が禁じられ、バイクも禁止されていましたから。引退後、その夢をついつい先のばしにしてきたんですが、早くしないとヨレヨレになってスクーターにも乗れなくなると思い、知人に背中を押される形で大型免許を取ったんです。2月に沖縄で知人の1500ccのハーレーに乗り、少し自信がついたので、今年中にハーレーを買うことにしました」(江本氏)
体力のある時間は限られている。楽しみを先のばしにする猶予は、不良老人にはないと肝に銘じよう。
『不良定年』の著書も有る作家の嵐山光三郎氏は「無理して善人になろうとする人ほど早死にしてしまう」と断言する。無茶苦茶な理屈かもしれないが、善人面してやりたいことを我慢し続けている“精神的下流老人”が、ストレスをためていることは間違いないだろう。
「仕事をしていないとボケるといって、定年後も仕事を探している人もいますが、そんなに先が長くないんだから、やり残したことをやったほうがええんちゃいますか」(江本氏)
やり残したことをやるために、あなたも堂々と「不良老人宣言」してみてはどうだろう。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号