“将来の総理候補”としてにわかに注目を集める男がいる。財務官僚出身の民主党の玉木雄一郎・衆院議員(46歳、香川2区)である。数々の総理候補ランキングでも上位に入っている。玉木氏はいまSEALDs(安保法案反対デモを行なう学生団体)のような政党や労組が裏にいない「民主主義2.0」が立ち上がる黎明期にあると指摘する。
──地方分権や地方創生にしても、いまの若い人たちは活発です。自分たちで愛情をもって地域興しとかやっていますしね。
「私が思うのは、地域が元気ないとかおじさんたちがいうなって。田舎はそんなに廃れていないし、農業でも若い人でどんどん攻めてる人たちがいる。だから古いおじさんたちの感覚で地方消滅とかいわないでほしい。『ペリフェラル(周辺)』といいますが、いまは周辺が中央を変える力を持ち得る時代です。
SEALDsしかり、アラブのジャスミン革命しかり、ネットのSNSを通じて、一部で起こった現象が一気に拡散していく。それも『民主主義2.0』の可能性です」
──元財務官僚のイメージと違い、郷土愛や土着性は大切にしていますね。
「今でも、猪が裏山から出てくるような家に住んでいます。そんな経験している国会議員なんてほとんどいないでしょう。
当選(2009年)以来、農政をやってきたからこそ、総理が『棚田を守る』とか『息を呑むような棚田の美しさ』とかいったりすると、やめてくれって思う。棚田の美しさなんていうのは観光客の視点で、農家の人なら『息を呑まなくていいから草刈ってくれ』っていうと思いますよ(笑い)。だから安倍総理に『あなたの農政には土の臭いがしない』っていったんです。
私は自分を土着の保守だと思っています。米作りは宮中に納める米をつくる献穀田や、天皇陛下が五穀豊穣を祝う新嘗祭といった、天皇制という我が国の文化に深く根付いたもの。その継続性について敬意を払うところから、農政ははじめなければなりません」
聞き手●藤本順一(ジャーナリスト)
※週刊ポスト2015年8月21・28日号