かつて40歳で二冠王に輝き「不惑の大砲」と呼ばれた門田博光氏(67)は、フルスイングが身上とされ、歴代3位となる567本塁打の記録を打ち立てた。最近では、柳田悠岐(ソフトバンク)をはじめとしたフルスイングで活躍する選手が目立つが、「フルスイングする選手」について門田氏は懸念があるという。それは、4、5月は体が元気なものだから本塁打を量産するが、夏場になると成績が低迷するという問題だ。門田氏が、現役選手に助言する。
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心配なのは西武の森友哉ですね。他のフルスイングする選手とは違って上半身だけのフルスイングなので、より失速は大きいでしょう。上半身を思い切り回して途中で下半身が止まるパターン。元気な時の打ち方なんですよ。年間通じて続けようと思えば、下半身が上半身を巻き込んで回転しないといけない。ソフトバンクの柳田悠岐も打率が下がってきているが、今は辛抱してフルスイングを続けるうちに、“極意”が分かってくるはずです。
僕は上背がなく(170センチ)、体格のいい外国人選手に対抗するためには、長くて重いバットをフルスイングするしかありませんでした。極意を掴むまでに7年かかりました。若い頃は、周囲の10人が10人「振ったらアカン」という時代。フルスイングしないことには要領が分からないのに、皆が邪魔していたようなもの。この僕でも鬱になりかけたほどでした。
周りの連中に邪魔されることなく、自分を貫くことができたら、必ず新しい世界が見えてくる。170センチの僕だって、567本もホームランを打てたんです。そういう人間がいることにときめいて、自分らしく頑張ろうと思ってほしいです。
●かどた・ひろみつ/1948年、山口県生まれ。南海、ダイエー、オリックスで活躍。40歳で二冠王(打点、本塁打)とMVPに輝いたほか、41歳で33本塁打、42歳で31本塁打を放ち「不惑の大砲」と呼ばれた。通算567本塁打、1678打点はともに歴代3位。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号