【マンガ紹介】『弟の夫(1)』田亀源五郎/双葉社/670円
えっ? 弟の夫? 「妻」ではなくて? 作品のタイトルを見て、そう思ったかたもいらっしゃるかもしれません。ですが文字通り弟の夫の話、つまり男性同士の結婚「同性婚」について描かれたお話です。
娘の夏菜と2人で暮らす弥一は、音信不通だった双子の弟・涼二を亡くしたばかり。その結婚相手であるカナダ人男性・マイクが日本へやってきて、生活を共にすることに――。
戸惑いを隠せない弥一とは違い〈男同士で結婚⁉ そんなことできるの?〉と素直に疑問を口にし、“おじさん”を受け入れる夏菜。〈どっちが旦那さんでどっちが奥さんなの?〉という問いにマイクは〈私のハズバンドはリョージ リョージのハズバンドが私〉と答えます。それを聞いた弥一は、無意識のうちに「男と女」をカップルの基準としていた自分に気づきます。
とはいえまだ近所の人には〈弟の…友人です〉と紹介してしまい…弥一の行きつ戻りつする気持ちが丁寧に描かれていきます。そんな弥一がことさら差別的な人物でも、進歩的な人物でもなく「ごく普通」の大人として描かれていて、読者も彼と共にゆっくりと理解を深めていけるような構成。
渋谷区では「同性パートナーシップ条例」が成立したばかり。「弟の夫」と聞いても、もちろん「妹の妻」と聞いても「えっ?」と聞き返すことなく、「そうなんだ」と当たり前のこととして答えられるようになっていけたらいいなあ、と改めて思うのでした。
(文/門倉紫麻)
※女性セブン2015年8月20・27日号