今月2日、日光東照宮に向かう並木道で突風が発生し、樹齢300年以上の松が20本以上倒れて道をふさぐ被害が出た。強風や竜巻は、突発的に発生するケースも多く予測が難しいが、竜巻でガレージの屋根が吹き飛んだような場合、どこに補償を求めればよいのだろうか? 弁護士の竹下正己氏が、こうした相談に対し回答する。
【相談】
叔父の家のガレージが突然の竜巻により、屋根の部分が吹き飛ばされました。叔父は火災保険にしか加入しておらず、書面を確認すると竜巻などの自然発生的な災害における補償に関しては明記されていませんでした。こういう場合、叔父は自腹でガレージの修理をしなければいけないのでしょうか。
【回答】
被災者生活再建支援法に基づき、自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が一定の支援金を支給する制度があります。ですが、竜巻も自然災害ではあるものの、支援の対象とする被災世帯とは、居住する住宅や、その敷地が自然災害で大きく被災した世帯です。ガレージ部分だけでは対象にならないでしょう。
その他、被災した住民に見舞金を出す市町村も少なくありません。その場合、まず市町村から、災害対策基本法による罹災証明書の交付を受けることを前提としています。
罹災証明書は災害の被災者から申請を受けて、住家の被害、その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、被害の程度に応じて全壊(50%以上)、大規模半壊(40%以上50%未満)、半壊(20%以上40%未満)に区分して評価し、該当する場合に罹災の証明をするものです。ただやはり、ガレージ部分だけの被災では、こうした見舞金も無理なようです。
なお、火災保険に竜巻被害について明記されていないので、保険金請求は無理とのこと。それでも「火災保険」として私たちが自宅に掛けている保険は、その多くが「家庭総合保険」とか「火災総合保険」などという名称で、補償の対象となる事故には風水害も含まれているのが大半です。諦めないで、もう一度、火災保険の保険証券をよく見てください。ちなみに、私の自宅の火災保険も同様です。
保険が無理だと、誰かの責任を追及できるかが次の課題です。周りの同種施設が何の影響もない場合、ガレージ工事がずさんであったための被害だと請負工事の瑕疵の責任を追及したいところです。しかし、竜巻は影響範囲が限定的ですから、周囲の状況だけでは竜巻の強さを肯定することも困難です。諦めるしかないでしょう。
【弁護士プロフィール】
◆竹下正己(たけした・まさみ):1946年、大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年、弁護士登録。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号