制度の中には作られたときは社会のニーズに合っていても、いまや時代錯誤になっているものも少なくない。日本では「おひとりさま」が急増し、「生涯未婚率」は男性約20%、女性約11%と過去最高を記録。単身世帯の数は約1680万世帯に達している。
ところが、税と社会保障の分野では時代の流れと逆行した《単身者差別》の制度が残っている。その典型が年金の「第3号被保険者制度」だ。
この制度は創設された1986年当時、「主婦の家事や育児を労働と認めるべきだ」という考え方から、働いていない専業主婦の女性にも年金を支払う制度として生まれた。だが、その専業主婦の保険料は夫に上乗せするのではなく、単身者を含めた年金加入者全体で負担している。
つまり、独身サラリーマンは「他人の妻」の保険料を支払っているのだ。
それでも生涯独身率が低かった時代は問題はなかった。しかし、生涯独身率が男性の5人に1人、女性の1割に達したいま、この制度は独身者にとっては“このまま他人の嫁さんの年金保険料を払い続けるのか”と不条理に映る。
妻の年収が103万円までのサラリーマンは所得の配偶者控除(38万円)を受けることができる制度も、「独身差別」といえるだろう。
専業主婦は最近の「働くママ」への手厚い税金投入で差別され、単身者は昔から見直されないままの専業主婦の特権に強い不満を感じる。
制度のひずみを解消しないまま続けてきたことが社会の不公平感を一層高めている。
※週刊ポスト2015年8月21・28日号