甲子園球場のバックネット裏から熱い視線を注ぐプロのスカウトは、球児のどこに注目しているのか。巨人V9時代のエースで、引退後はスカウトとして落合博満を見出した城之内邦雄氏が説明する。
「投手ならまず、体にバネがあるかどうかをチェックします。遠投力や変化球のキレも大切。球速は150キロ以上が基準です。それ以下だと皆同じ評価になる。
打者の場合は、私自身が投げているつもりでチェックします。変化球への対応や長打力はもちろん、相手の凡ミスに乗じて次の塁を狙うような野球センスを特に重視している」
その視点を踏まえたうえで、スカウトたちが今年の「ドラフト1位候補」と太鼓判を押すのが、小笠原慎之介(東海大相模)だ。
大会ナンバーワン左腕の呼び声通り、2回戦の聖光学院(福島)戦で152キロをマーク、大会史上3人目となる左腕の150キロ超えで球場をどよめかせた。捕手出身で、石井一久、古田敦也らを発掘したヤクルトの元スカウト・片岡宏雄氏が語る。
「体格やプレートさばきは文句なし。左バッターに強い左投手で150キロを投げられるし、プロとしての資質はすでに備わっている」
前出の城之内氏も頷く。
「左で球が速いというのはプロで成功できる特徴の一つ。その速球を生み出しているのは彼の強い背筋です。背筋が弱いと故障しやすいが、彼にはその心配がなさそう。変化球を磨けば即戦力になりますね。左の好打者が多いプロで左投手がカーブを投げれば成功するといわれるので、まずカーブを覚えることですね」
撮影■藤岡雅樹
※週刊ポスト2015年9月4日号