救急外来はいつも大忙し。残暑厳しい今の季節は熱中症患者が大量に搬送され、8月3~9日までの1週間で1万1219人、今シーズン累計で4万5524人となった(総務省消防庁、8月11日現在)。ただ、その中には「どうしてそうなったんだ?」とツッコミたくなるような理解不能の患者もやってくるのだという。救急医療に携わる30代女性看護師が明かす。
「先日は『尿道にシャープペンシルの芯が刺さって取れない』という男子大学生の患者がきました。『どうしてこうなってしまったんですか』と尋ねると、『全裸で試験勉強をしていたら、折れた芯がたまたま刺さった』のだそうで……(笑い)。結構奥深くまで刺さっていたので、折れないように内視鏡で慎重に取り出しました」
「珍しい急患」が運ばれてくると、医者も処置した経験がなかったり、判断が難しかったりして治療に多くの時間が割かれてしまう。一風変わった症例に出くわしたとき、医師はどうやって治療法を決めるのだろうか。実は参考書がある。
『マイナーエマージェンシー 原著第3版』(大淹純司監訳、エルゼビア・ジャパン/医歯薬出版刊)は、その名の通り「珍しい急患」にどう対処するかを11領域、184項目にわたって解説している。800ページ以上にわたる同書は、「コンタクトレンズが目の裏側に入ったときの対処法」や、「催涙ガスに曝された」、「しゃっくりが止まらない」さらには「ひどい日焼け」まで対処法を丁寧に解説している。
たとえば「耳に生きた昆虫が入った」場合。
〈耳に生きた昆虫が入っている場合は、まずは外耳道を液体で満たして虫を殺す(中略)患者を側臥位にさせ、外耳道に上記の液体を滴下しながら、気泡を除去するために耳介を引っ張り、耳珠(編集部注・耳の穴の付近にある出っ張った部分)を押す〉
そしてその中には、前述の「尿道にシャープペンシルの芯」のような、レアで恥ずかしい症例への対処法も含まれている。
※週刊ポスト2015年9月4日号