巨額マネーが動くスポーツイベントでは招致に絡んだ密約がつきものだ。
2018年と2022年のサッカーW杯で、それぞれロシアとカタールに開催地が決まったことをめぐってFIFA(国際サッカー連盟)の汚職・不正疑惑が取り沙汰されている。が、アメリカの司法当局がFIFAの捜査に本格着手する以前の昨年11月末、韓国とイングランドの密約が暴露されて大騒ぎになったことは、なぜか日本の新聞ではほとんど報じられなかった。
英国紙「サンデータイムズ」など複数の英メディアは、イングランドサッカー協会(FA)関係者の証言として、大韓サッカー協会名誉会長の鄭夢準(チョンモンジュン)氏とイングランドのジェフ・トンプソン氏(いずれも当時FIFA副会長)の間で、票を取り交わす密約があったことを報じた。
韓国が2018年招致でイングランドに投票する代わり、2022年招致を目指す韓国にイングランドが投票するという取引だったとし、さらに韓国側は投票日前日にデビッド・キャメロン英首相と密会してイングランドへの投票を約束していたという。
それが暴露されたのは「韓国が我々に投票しなかったから」(FA関係者)。韓国はロシアに投票していたのだ。その裏切りにキレたイギリスに密約を明かされるというお粗末な展開だった。
名指しされた鄭氏は自身の公式ホームページで「事実無根」と反論したが、FIFAは開催地選定に絡む様々な不正疑惑について、いったんは「嫌疑なし」とした昨年の調査結果を見直す考えを明らかにしている。
サッカージャーナリストの財徳健治氏はこう指摘する。
「FIFAのブラッター会長は、会長選でのアフリカ票欲しさに南ア開催を決めたとされています。トップからしてそんな体質だから、こっそり票を融通し合うのはよくあることと言えます。
とはいえ表沙汰になることはなかった。2002年のW杯招致では、日本に遅れを取った韓国が当時の欧州連盟幹部に泣きついて日韓共催に漕ぎつけたとされます。逆にイングランドにすれば、“我が国で開催したい時はわかっているよね”という腹でした。しかし韓国に恩を仇で返され、腹に据えかねて暴露したのでしょう」
韓国の裏切り体質によってこの密約は明らかになったが、まだまだ隠された取引はありそうだ。
※SAPIO2015年9月号