中国経済の減速に加え、天津で起きた爆発事故の影響で工場の操業停止など打撃を受けている日本の自動車メーカー。
「中国の自動車市場は、成熟化や競争激化によってただでさえ生産調整を迫られていた。もはや、かつてのような二ケタ成長は見込めない」(大手メーカー幹部)との嘆き声も聞こえてくる中、次なる拡大市場として日本企業が注力しているのがインドだ。
なにしろインドは2028年ごろに人口が14億人を超え、中国を抜いて世界一の大国になる(国連調査)と見られている。
自動車産業でいえば、いまでこそ年間の生産台数は321万台と日本の1100万台の半分にも満たないが、人口増加がモータリゼーションを一層進展させるとの見方に疑いを持つ人はいない。「数年以内に日本やドイツを軽く超え、中国・米国に次ぎ世界3位の巨大市場になる」(自動車業界アナリスト)と予測されているのだ。
日本メーカーの“インド進攻”はすでに成果をもたらしている。1980年代に早々とインド進出を果たしたスズキ(子会社のマルチ・スズキ)は、価格の安い小型車を中心に販売が好調で、40%を超えるトップシェアを堅持している。
その他の日本車は出遅れていたが、ここにきてホンダがインド向けのセダンやミニバンなどを相次いで投入したおかげで、5位メーカーに躍進。同社幹部も、〈アジア戦略の中で、最終的な主戦場はインド〉と鼻息が荒い。
だが、日産自動車・ルノー連合がインド・チェンナイ近郊にある工場で数百人規模の人員削減と生産縮小を計画しているとの報道が出るなど、必ずしも明るい先行きを抱いているメーカーばかりではないようだ。
果たして、インドの自動車市場は本当に有望なのか。数年前にインドを訪問して日本メーカーの工場を視察したというジャーナリストの福田俊之氏は、「中国ほどの伸びは期待できない」と話す。