なぜ、韓国はいつまでも「反日」を止められないのか。ソウルの日本大使館前に慰安婦像が設置された際の駐韓大使で、著書『日韓対立の真相』(悟空出版刊)において外交戦の舞台裏を赤裸々に明かした武藤正敏氏が、外交官としての体験を基に「反日の構造」を解き明かす。
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慰安婦、竹島、世界遺産登録反対……韓国の度重なる「反日」的な外交により、日本では嫌韓を通り越して「韓国はもう放っておけ」という空気が蔓延している。韓国の反日が日本の嫌韓を生み、それがまた韓国の反日を促進するという負の相乗効果で日韓の対立が続いているのだ。
しかし、今の韓国の「反日」は昔とは異なるというのが、2012年まで大使を務めた私の印象だ。かつての韓国はすべてにおいて反日で、1970年代は日本のことを口にすることさえ許されなかった。そうした雰囲気の中で日韓関係が進められたのは、ひとえに歴代大統領のリーダーシップによる。
朴槿恵大統領の父親である朴正煕大統領は国内の反日勢力を封じて日韓国交正常化を成し遂げた。1980年代は全斗煥大統領が中曽根康弘首相と蜜月を築いた。1990年代後半に金大中大統領が日本文化を解禁すると、それまで水面下でのみ知られていた日本文化が韓国内に浸透し、韓国人は日本に好感を持つようになった。
韓国人の対日感情の波は大きく揺れ動いてきたが、それを沈静化させ、改善させ得たのは信念を持って外交を進めた韓国大統領の力と意思であった。
日本人は、韓国は全体的に反日だと思っているかもしれないが、韓国の若者は日本のアイドルやアニメが大好きだし、日本人に対してそう悪い感情を持ってはいない。今の韓国の反日感情は歴史問題(特に「従軍慰安婦」問題)と領土問題に絞られており、ごく一部である。
しかし、人の目を気にして親日になりきれないのが韓国の複雑なところだ。本音では日本が好きでも反日の建前を表明しなければ生き辛いのが韓国社会である。一部の声の大きい反日勢力が韓国社会に与える影響が強く、国民は反日への同調圧力に晒されている。
それは韓国マスコミの無責任な反日報道や、韓国政府に「慰安婦問題の解決の努力をしないのは違憲」と迫った憲法裁判所の判決(2011年)を見ても明らかだ。
※SAPIO2015年9月号